1995 Fiscal Year Annual Research Report
マンガンでドープした金属カルコゲナイト薄膜の局所歪とその発光特性
Project/Area Number |
07650782
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
中村 高遠 静岡大学, 工学部, 助教授 (10022287)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中西 洋一郎 静岡大学, 電子工学研究所, 助教授 (00022137)
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Keywords | 薄膜および超格子の局所歪 / 赤色発光 / EPR |
Research Abstract |
ホッウォール法によりGaAs(100)基板上にCdTe:Mn薄膜を作成し、X線回折実験(XRD)からそれがエピタキシャル成長することを確認した。そして常磁性共鳴(EPR)測定からゼロ磁場分裂パラメータが単結晶の場合よりも約30%小さいことが分かった。このことからGaAs(100)基板とCdTeの格子不整合がそれにドープされたマンガン(II)の結晶場に影響していることを見出した。 つぎに薄膜の成長速度を基にしてGaAs(100)基板上にCdTe:Mn-ZnS超格子を作成した。RHEEDパターンからエピタキシャル成長であること、XRDにおけるZnS(400)回折線のサテライトから超格子であることを確認し、室温でのHe-Cdレーザー励起で赤色の発光を観察した。EPRスペクトルについて薄膜の場合と比較すると次の違いがあった。1)室温では薄膜は線幅が非常に幅広いのに対し、超格子では0.2mTの線幅の6本の超微細線が現れる。2)77Kでも角度依存性を示すようなゼロ磁場分裂は観察されない。3)g値がCdTe:Mn薄膜よりもO0.0044小さくなり、超微細分裂定数が13%大きい。この結果からつぎのことが推察された。1)については量子井戸を形成するCdTe層の伝導帯や価電子帯とマンガンの3d準位の間の相対的なエネルギーが変化し、非発光のバイパスとなり得る相互作用が減少したと考えられる。2、3)については格子定数がZnSに較べて約19%大きいCdTeの層では圧縮歪の影響である。つまり、圧縮歪みによってその中にドープされたマンガンとテルルの原子間距離が短くなる。この影響は単に原子間距離の変化に止まらず、両者のイオン性を変化させる。CdTe:Mn薄膜ではg値が自由イオンよりも大きいのでマンガンとテルルの間の結合は共有結合性が大きい。しかし超格子ではその値が自由イオン側にシフトするので、テルルからマンガンへの電子移動が減少してイオン性が増加したと云える。このことは超微細分裂定数の増加にも反映し、核スピンとの相互作用が大きくなる。以上のことから、CdTe層にドープされたマンガンは異常に強い結晶場の中にあり、それが超格子の室温での紫外線励起発光を可能にし、発光波長が670nm付近となった原因と推定した。
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