1995 Fiscal Year Annual Research Report
メスバウアー効果による2相ステンレス鋼の経年劣化の研究
Project/Area Number |
07650805
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
桑野 寿 室蘭工業大学, 工学部, 教授 (90002899)
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Keywords | ステンレス鋼 / スピノ-ダル分解 / 経年劣化 / クロム富化相 / 脆性 / メウバウアー効果 / 内部磁場 / フェライト |
Research Abstract |
(1)時効処理の進展状況:400℃での時効は6000hまで完了し、4000hで2相分離反応が終了することを確認し、当初目的を達成した。350℃時効は10000hまで経過したが、2相分離反応は全体の80%程度までしか進行しておらず、終了までにあと1〜2年が必要と予測される。補助金で作成した引張試験片の350℃時効を開始した。 (2)2相分離の機構:時効処理の完了した450、400℃時効について、メスバウアー効果測定を行なった。補助金で購入した強度の高い線源を用いることにより、精度の良いスペクトルが得ることができた。複雑な実測スペクトルを成分ピークに分離することにより、2相分離で生成する常磁性α′相の析出過程を調べ、その体積分率を測定した。450℃と同様に400℃でも時効の比較的早い段階からα′相が析出し、2つの温度での機構は本質的に同じであることが確認された。350℃での実験はまだ中途段階であるが、α′相の析出は400、450℃に比べてかなり遅くなる。 (3)脆化と効果の機構:時効時間の経過とともにフェライト硬度は増加するが、オーステナイト硬度は変化しないこと、さらにシャルピー試験における破断はフェライト粒内で起こることから、硬化の主たる原因はフェライトにあることが確認された。フェライト硬度および降伏応力はα′相の体積分率に正比例して増加することから、α′相が硬化の原因であることが判明した。伸びおよびシャルピー衝撃値の低下はかならずしもα′相の体積分率と正比例的に変化する訳ではないが、強い相関をもって変化するので、メスバウアー硬化は脆化過程を非破壊的に判定する手段として有効であることが確認された。 (4)耐食性の変化:時効とともに耐食性が低下することが、分極測定による不動態化電位、再活性化率変化から確認された。耐食性低下とメスバウアー効果測定で検出される内部磁場増加が良い対応をすることが確認された。 (5)公表:申請した旅費を使用して、研究成果を平成8年日本鉄鋼協会春期講演大会で口頭発表する。
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