Research Abstract |
研究代表者らは,本研究課題と関連して,これまでに単純共晶系,中間化合物を生成する共晶系,全率固溶体系など種々の有機物質2成分系の固液平衡を高圧下で測定し,固液平衡関係の温度・圧力・組成依存性等について検討してきた。また最近では,等方性有機液体の他に新しい成分として,種々の物性が異方性を示す液晶を加えることにより,固相-液晶相,液晶相-等方性液体相などの相転移についても測定を行っている。平成8年度は,(1)前年度に測定したベンゼン,シクロヘキサンとn-テトラデカン,n-ヘキサデカンからなる4種類の2成分共晶系の研究成果を論文として報告するとともに,新しくベンゼン,シクロヘキサン,n-テトラデカンからなる3成分系の相状態図に対する圧力効果の測定を行った。また,(2)(液晶+液晶),(液晶+等方性液体)などの新しい組合わせの溶液について,固相-液晶相,液晶相-等方性液体相などの相転移を高圧下で試み,転移温度に対する圧力効果を測定するとともに,従来知られていない未知の現象を生じるかどうかについて検討した。 (1)については,サファイア製窓付高圧固液平衡測定装置を用いて,230〜323K,0.1〜120MPaの範囲で固液平衡の測定を行い,高圧下の3成分系共晶図の挙動を観察した。先に測定した4種類の2成分系共晶図に対する圧力効果から予測されるように,3成分混合系の共晶点も,組成は常圧の値とそれほど変化することなく,加圧とともに状態図全体がほぼ平行に高温側に移動することが確認された。 (2)に関しては,ビデオマイクロスコープを備えた高圧相転移観察装置と同心円筒型小型畜電器を用いて,ネマチック液晶(MBBA+EBBA)系の相転移に対する圧力効果を,263〜363K,0.1〜30MPaの範囲で目視観察と誘電率測定の両面から検討した。また,液晶と等方性液体間の分子間相互作用は興味深く,従来ほとんど研究されていないので,液晶相-等方性液体相間の相転移温度T_<N1>に対する等方性液体添加の効果や,液晶の分子配向消滅の臨界濃度の有無などについて測定した。その結果(MBBA+EBBA)系ではT_<N1>転移温度と組成の間に加成性が成立するのに対して,(EBBA+C_6H_<12>)系では,C_6H_<12>の添加によりT_<N1>転移温度は著しく低下することが明らかになった。これは棒状分子からなるネマチック液晶に,非棒状のC_6H_<12>分子が加わることにより,液晶のパッキングに異常が起こり,分子の配向が困難になることによるものと考えられる。これらの研究結果は,AIRAPT-16 & HPCJ-38国際会議(Aug.25-29,1997.京都)にて報告する予定である。
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