1996 Fiscal Year Annual Research Report
陰イオンキャリヤ-の液一液二相分配に基づく分離分析への応用に関する基礎研究
Project/Area Number |
07650979
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Research Institution | KUMAMOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
城 昭典 熊本大学, 工学部, 教授 (40038047)
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Keywords | 溶媒抽出 / イオン対抽出 / 金属ポルフィリン錯体 / 陰イオンキャリヤ- / 陰イオンキャリヤ- / 亜硝酸イオン / 無機陰イオン / フッ化物イオン |
Research Abstract |
本年度の研究計画に従い、前年度合成したテトラフェニルポルフィリン(TPP)のMn(III),Mo(V)ならびにFe(III)錯体(それぞれ、Mn(TPP)^+,MoO(TPP)^+,Fe(TPP)^+と略記)ならびに本年度合成したCo(III)錯体,In(III)錯体(それぞれ,Co(TPP)^+,In(TPP)^+と略記)について、各種陰イオンの液一液二相分配に関する検討などを行ない以下の成果を得た。 1)加水分解効果の小さいMn(TPP)^+とIn(TPP)^+については、溶媒抽出イオン交換定数の測定が可能であり、約5種の一価無機陰イオンについてBr^-基準のイオン交換定数を、水-クロロホルム系ならびに水-1,2-ジクロロエタン系について測定した。その結果、これらの錯体の陰イオン抽出における非ホフマイスター挙動は溶媒極性が低下するほど顕著になることがわかった。他の錯体についても,同様の傾向があることを半定量的に明らかにした。以上によりこれらの錯体の陰イオン選択抽出性は、中心金属イオン種のみならず溶媒の種類によっても影響されることが明らかになった。 2)いずれの錯体も、pH5-6以下の酸性側では陰イオンの抽出が可能であるが、塩基性側では陰イオンの抽出がかなり困難になることがわかった。すなわち酸性側による抽出、塩基性側における逆抽出が可能である。しかし、親和性の高い陰イオン(例えばMoO(TPP)^+においてはF^-など)の水酸化物イオンによる溶出速度はかなり遅いが、親和性の低い陰イオン(例えばMoO(TPP)^+においてはBr^-など)の水酸化物イオンによる溶出速度は迅速であることがわかった。 3)MoO(TPP)^+がF^-に高い選択性を示すのみならず、MoO(TPP)Fの吸収スペクトルが他の陰イオンの場合とかなり異なることに注目してF^-の抽出比色分析法の開発を行なった。本法によれば、水相のpHを塩酸または過塩素酸により2-3程度に保つことにより、1ppm以下のF^-の定量が可能である。Cl^-,NO_3およびSO_4^<2->は100倍モル程度共存していてもほとんど妨害しない。さらに、Co(TPP)^+によるNO_2^-の溶媒抽出比色定量も可能であることを認めた。
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