1995 Fiscal Year Annual Research Report
新規ルテニウム分子状水素錯体の特異なNMR挙動の解明-(H_3)配位子の可能性
Project/Area Number |
07651064
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Research Institution | Saitama Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐分利 正彦 埼玉工業大学, 工学部, 教授 (90011022)
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Keywords | 分子状水素錯体 / ルテニウム / 配位不飽和錯体 / ジホスフィン / 緩和時間(T_1) |
Research Abstract |
各種ジホスフィン(dppe、dppp dppb binap dpbpなど)を配位子とする分子状水素錯体[RuH(H_2)(P-P)_2]^+(P-P=各種ジホスフィン)の構造を^1Hおよび^<31>PNMRにより検討したが、いずれの場合も基本的にヒドリド配位子と配位水素分子がtransに位置した構造を取ることが明らかにされている。しかし、dpmb(1、2-bis(diphenylphosphinomethyl)-benzene)を配位子とする分子状水素錯体[RuH(H_2)(dpmb)_2]^+(1)は測定した全ての温度範囲(30〜-90℃)においてヒドリドに帰属される^1H NMRシグナルを1本しか示さず、trans体を全く与えないことが判明した。このヒドリドシグナルのT_1は30、-30、および-90℃においてそれぞれ45、25、および46msであり、H_2配位子の寄与を一応支持する値である。ここで注目されるのは、低温(-60℃以下)でもヒドリド(H^-)と水素分子(H_2)とが^1H NMRでは区別できないが、^<31>P NMRでは2本のtripletが観測される点である。このNMR挙動はこの錯体がヒドリド配位子と水素分子が互いにcisに位置した6配位構造か、あるいは(H_3)を含む3角両錐型5配位構造のいずれかを取っていることを示すと考えられる。いずれの構造であるかを決定するには錯体の単結晶を得て、X線結晶解析により錯体分子の概略の構造を確定することが必要であり、繰り返し単結晶を得るよう努めたが、これまでのところ良好な単結晶が得られず、錯体の構造に関して結論を出すには至っていない。
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