1996 Fiscal Year Annual Research Report
作物の生殖過程における不稔発生機構の組織学的ならびに生理学的解明
Project/Area Number |
07660023
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
山崎 耕宇 東京農業大学, 生物産業学部, 教授 (30011878)
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Keywords | 水稲 / 不稔 / 退化 / 低温 / 組織化学 / 雄ずい / 組織形成 |
Research Abstract |
前年に引き続き、幼穂形成期の低温処理が水稲の頴花の発育におよぼす影響を、とくに組織化学的手法を中心に検討した。 1.まず低温処理により、退化頴花が多発するという前年の知見にもとづき、この点をさらに詳細に追求した。ここで退化頴花とは、大きさは多様であるが発育不全のまま出穂時にも白色にとどまる頴花を指している。1穂上では基部の1次枝梗の最も穂軸寄りの位置に退化頴花が多発することをまず確認し、ついでこの位置の頴花の発育を組織化学的に観察している。 その結果、低温によって退化にいたる頴花は、葯分化の初期から組織中のタンパク質量が著しく低下し、代って多糖類の蓄積が著しいこと、雄ずいを構成する諸組織の生長が早期に停止するために、器官が小型のまま留まること、花糸の維管束を含む諸組織の発育もまた不良となり、早期に組織の萎縮や崩壊の起こること、などの特徴を明らかにしている。 2.ついで窒素質肥料の多量の投入が冷害を助長するという経験的事実を考慮し、質素質肥料の施用量を異にして育てた水稲に低温処理を施し、頴花および雄ずいの発育におよぼす影響を検討している。 窒素を多用した場合に、退化頴花、不稔籾の発生がより著しくなることをまず確認し、ついで雄ずいの発育を組織化学的に観察した結果、前年観察した4つの異常タイプのうち、多糖類の異常に蓄積するタイプがとくに増加することを見出し、窒素が体内の炭水化物代謝を介して雄ずいの発育に影響をおよぼすことが推察された。
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