1995 Fiscal Year Annual Research Report
セイヨウナシの成熟に伴う細胞壁の変化に関する生理学的研究
Project/Area Number |
07660025
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
元村 佳恵 弘前大学, 農学部, 教授 (50005609)
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Keywords | セイヨウナシ / 細胞壁 / ペクチン / ウロン酸 / ペントース / フェノール性物質 |
Research Abstract |
1、セイヨウナシ'ラ・フランス'の成熟開始期から収穫期の果肉中の細胞壁成分として、ポリウロナイドの年による量的変動を3年間にわたって定量したところ、収穫期の果実を貯蔵した時最も果肉の軟化が早かった年には、満開後107日から139日までの含量が低かった。その後は減少し、165日前後には年による変動はほとんど見られなかった。 2、満開後107日から177日までの間約2週間間隔で果実と葉が着生している枝を採取し、葉に^<14>CO_2を施与して光合成させたところ、施与後24時間では107日目と119日目の施与ではアルコール不溶性画分に^<14>Cが検出されたが、それ以後の施与では検出されなかったことから、満開後119日目ころまでは果肉内でポリウロナイドなどの高分子化合物の合成が行われているが、それ以降は合成活性が低下することが明らかにされた。これらの結果から満開後110〜120日ころのポリウロナイド含量は、収穫後の果実の軟化を予測するための指標の一つとして利用できる可能性が示された。 3、セイヨウナシの果肉の石細胞は果肉組織の一部の細胞壁にリグニン物質が集積して肥厚したものとされている。果実の成熟や貯蔵中の石細胞の変化については報告が見当たらない。本研究では果肉のリグニンを定量することによって、石細胞の変化を追跡したところ、追熟に伴って石細胞がもろくなること、及びアルコール不溶性画分のリグニン含量が減少することから、リグニンの分解が起こることが示唆された。 4、リンゴ及びブドウの生鮮貯蔵における果肉の細胞壁部分の変化の品種間差異を見たところ、貯蔵性の高い品種では貯蔵性の低い品種に比べて、細胞壁のポリウロナイドばかりでなく糖鎖の可溶性が少ないことが明らかにされた。この結果は果実の軟化にはペクチンのウロン酸重合体の分解ばかりでなく糖鎖の分解が関わっていることを示している。
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[Publications] Motomura.Y.: "Concentration and composition of starch and polyuronide in 'La France' pear during maturation in relation to fruit softening after harvest." Bull.Fac.Agr.Hitosaki Univ.,. 59. 36-46 (1995)
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[Publications] 元村佳恵: "セイヨウナシの果肉における石細胞の分布とリグニン含量" 園芸学会雑誌. 64別1. 588-589 (1995)
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[Publications] 元村佳恵: "リンゴ貯蔵中の果肉の粉質化の難易と細胞壁ウロン酸及びペントースの変化" 園芸学会東北支部発表要旨. 7年度. 29-30 (1995)
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[Publications] 元村佳恵: "バラ科果樹の果実及び根幹部における光合成産物の蓄積と代謝に関する研究" 弘前大学教育研究学内特別経費報告書. 7年度. 1 (1996)
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[Publications] 元村佳恵: "ブドウの貯蔵中における果肉の細胞壁成分の変化" Amer.Soc.Enol.Vitic.,Japan Rep.6(3). 178-181 (1995)
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[Publications] 北原晴男: "植物成長物質の合成研究" テルペンおよび精油化学に関する討論会発表要旨. 30. 1III14 (1995)
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[Publications] 北原晴男: "植物細胞壁を構成する架橋物質の合成研究" 化学系7学協会連合東北地方大会研究発表要旨. 7年. 9 (1995)
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[Publications] 日向康吉: "植物生産農学実験マニュアル" ソフトサイエンス社, 455 (1995)