1996 Fiscal Year Annual Research Report
セイヨウナシの成熟に伴う細胞壁の変化に関する生理学的研究
Project/Area Number |
07660025
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Research Institution | HIROSAKI UNIVERSITY |
Principal Investigator |
元村 佳恵 弘前大学, 農学部, 教授 (50005609)
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Keywords | セイヨウナシ / 細胞壁 / ペクチン / ウロン酸 / ペントース / フェノール性物質 |
Research Abstract |
1、セイヨウナシや和ナシは果肉内に石細胞を含んでいることが特徴の一つである。石細胞は果肉組織の一部の細胞にリグニンが集積した異形厚膜細胞の一種とされている。石細胞の主成分とされるリグニンは、フェノール性物質の高重合体であることから、本研究では、セイヨウナシ'La France'の果肉の結合型フェノール性物質の性質と果実発育に伴う変化について、酸やアルカリ、臭化アセチルなどに対する溶解性の面から検討した。 2、果実の縦断面のphlorglucinolによる組織染色によって、果実の発育初期にはすでに石細胞が形成されていることが観察された。 3、6月17日から10月14日まで1週間間隔で収穫した果実の不溶性固形物中のフェノール性物質含量について、果実の発育段階を追って見ると、臭化アセチル可溶性画分は発育初期に高く、発育が進むにつれて減少した。しかし、72%硫酸処理後3%硫酸分解画分では、臭化アセチルと同様の傾向を示したが、値は著しく低かった。 4.硫酸及び塩酸可溶性画分は、発育が進むにつれて増加し、発育全期を通じてエタノール可溶性が高く、エタノール可溶性と水可溶性との差は発育が進むにつれて増大した。 5.過塩素酸可溶性画分は、発育が進につれて減少し、発育全期を通じてエタノール可溶性が明らかに高く、発育初期ではエタノール可溶性と水可溶性の差が大きかったが、発育が進むにつれてその差が減少した。水酸化ナトリウム可溶性画分は発育が進むにつれて減少し、発育中期では水可溶性がエタノール可溶性より高い値を示したが、発育初期と後期ではエタノール可溶性と水可溶性との間に差異は認められなかった。 6.以上の結果から、セイヨウナシの果肉の結合型フェノール性物質は、発育が進むにつれて質的に変化することが明らかにされた。
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[Publications] 元村佳恵: "セイヨウナシの果実発育に伴う結合型フェノール生物質の変化" 園芸学会雑誌. 66別1. (1997)
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[Publications] 奈良一寛: "リンゴ貯蔵中における果肉の粉質化と細胞壁ペクチンの中性糖の変化" 園芸学会雑誌. 66別1. (1997)
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[Publications] 西沢隆: "遮光処理がメロン果実の硬度、水浸状化およびエチレン生成量に及ぼす影響" 園芸学会雑誌. 66別1. (1997)
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[Publications] 元村佳恵: "メロン果実における水浸状化と遮光による細胞壁成分の変化" 園芸学会東北支部発表要旨. 8年度. 61-62 (1996)
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[Publications] 西沢隆: "果実発育期における短期の遮光処理がメロン果実のアルコール含量に及ぼす影響" 園芸学会雑誌. 65別2. 464-465 (1996)
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[Publications] 元村佳恵: "ブドウの果肉崩壊と細胞壁成分の変化" J.Amer. Soc. Enol. Vitic., Jaopan Rep.7(3). 214-215 (1996)
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[Publications] 片平光彦: "生ニンニク球根の予措乾燥における褐変とフェノール性物質に及ぼす温度の影響" 園芸学会雑誌. 65別2. 766-767 (1996)
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[Publications] 富田雅弘: "醤油火入れオリ生成促進因子の精製" 農芸化学会東北支部・北海道支部合同学術講演会. 平成8年. (1996)
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[Publications] 元村佳恵: "青森ぶどうの歴史とスチューベン 世界と日本のブドウ品種" 弘前市農業協同組合ぶどう部会, 28 (1996)
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[Publications] 元村佳恵: "ヤマブドウの栽培と利用に関する研究" 平成7年度 新郷村地場産品開発事業, 23 (1996)