1995 Fiscal Year Annual Research Report
果実の樹上成熟と追熟におけるエチレン生合成調節システムの相違
Project/Area Number |
07660037
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
稲葉 昭次 岡山大学, 農学部, 教授 (90046491)
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Keywords | エチレン / 果実成熟 / トマト / ACC合成酵素遺伝子 |
Research Abstract |
果実が樹体に着生して成熟する場合(樹上成熟)と収穫後に成熟する場合(追熟)では、エチレン生合成に関与する酵素遺伝子の発現が異なることを想定して、トマト果実を用いてACC合成酵素遺伝子の発現をノーザンブロット分析により調べた。 その結果、成熟トマトには成熟型と傷害型のACC合成酵素遺伝子が発現していた。この2つの遺伝子の発現を成熟方法について比較したところ、樹上成熟果では成熟開始時に両方のACC合成酵素遺伝子が同時に発現していたが、追熟果では傷害型遺伝子のみが最初に発現し、しばらくして成熟型が発現した。エチレン未生成段階の果実にプロピレンでエチレン生成を誘導すると、傷害型ACC合成酵素遺伝子のみの発現が誘導された。逆に、エチレン生成段階の果実にエチレン作用性阻害剤を処理すると傷害型のACC合成酵素遺伝子の発現は消失したが、成熟型の発現には影響しなかった。これらの結果から、樹上果では成熟型のACC合成酵素遺伝子がまず最初に発現してエチレン生成が始まり、そのエチレンによって傷害型ACC合成酵素遺伝子が誘導され成熟が始まるが、追熟果では収穫が傷害として働き傷害型ACC合成酵素が誘導されエチレン生成が始まり成熟が進行すると推論された。また、傷害型ACC合成酵素遺伝子はポジティブフィードバック制御を受けており、その発現には絶えずエチレンを必要としているが、成熟型ACC合成酵素遺伝子の発現は未知の因子によって支配されていると考えられた。今後、この未知因子の同定により成熟開始機構の解明に興味がもたれる。
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