1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07660074
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Research Institution | HIROSAKI UNIVERSITY |
Principal Investigator |
齋藤 寛 弘前大学, 農学部, 助教授 (50003520)
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Keywords | リンゴ / アントシアニン / ケルセチン配糖体 / 窒素施肥 / フラボノイド代謝 |
Research Abstract |
1972年より連年無窒素栽培(-N区)したリンゴ(紅玉)果実と窒素区(2kgN/樹,+N区)の果実を供試材料とした。収穫時の果実の着色率は-N区で+N区より良好であった。リンゴ果皮のフラボノイド化合物としてアントシアニン(AN),ロイコアントシアニン(LA)およびケルセチン配当体(QG)を定量した。着色率90%以上の果実で,全フラボノイド化合物濃度は-N区で383nmol/cm^2果皮,+N区で340nmol/cm^2果皮であった。全フラボノイド化合物に占める各フラボノイド化合物の割合は,-N区でAN:33%,LA:13%,QG:54%であり,+N区ではAN:23%,LA:12%,QG:65%であった。この結果は窒素施肥によりAN生合成が抑制され,QG生合成が促進されたことを示す。 このことの原因を究明するためリンゴ果皮からプロトプラストを調整し,これを実験系として用いることを計画した。プロトプラストの調整には成功したが,ANは発現しなかった。その原因としては果皮の殺菌に用いた次亜塩素酸ソーダによる脱色作用が考えられた。そこでガラス繊維ろ紙に処理液にしみこませ,リンゴ果皮に密着させ,ラップで覆って12時間放置し,その後ろ紙を除去して15℃蛍光灯連続照明下で76時間静置した。処理液として硫安,アスパラギン(Asn)およびポリアミン類のImM溶液を用いた場合,-N区,+N区の果実ともAN発現は阻害された。ポリアミン類ではプトレシン(Put)がもっとも阻害効果が大きかった。一方,ANおよびQGの前駆物質を添加した場合,-N区ではフェニルアラニン(Phe)のみANの生成を促進したが,+N区ではPhe促進効果は認められず,ジヒドロケルセチン(DQ),t-桂皮酸(tC)がANの生成を促進した。また,Asn,PutによるAN生成抑制効果はDQ,tCの添加によって軽減された。
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