Research Abstract |
ダイズ品種Braggの子葉にUVを照射することでファイトアレキシンの合成を誘導し,TLCでグリセオリンI, II, IIIおよびグリシノール類(TLCで3種)を分離精製し,これらの化合物のNMRより3種のグリセオリンについて同定した.しかしグリシノールについては,文献値と違って収率が非常に悪く,同定ができなかった.分子吸光係数より推定したグリセオリンI, II, IIIの収量は,各々82.78, 15.64, 29.74μg/gFWであったが,3種のグリシノール類縁化合物のそれは,8.64, 2.61, 7.50μg/gFW(グリシノールの分子吸光係数より推定)で有り,グリシノール類の分解産物が精製の段階で多く認められた.そこで,フラッシュクロマトグラフィーにより抽出物を粗精製して,さらに精製・分析に供試することにした. 精製した各種イソフラボノイド化合物と市販のダイゼインを標品として用いて,Rhizobium fredii USDA193を接種し4週間栽培した各種Rj遺伝子を保有するダイズ7品種の根(内,有効根粒形成品種4品種)と有効根粒のイソフラボノイド類をTLCで比較検討したところ,グリセオリン類が全ての品種の根に含まれ,その量的差は認められなかった.グリシノール類, ダイゼインの含量は,有効根粒を形成しなかったダイズ品種にその含量が高かった.有効根粒中のグリセオリン類,グリシノール類の含量は,低レベルに抑えられていたが,ダイゼインの含量は根で含量と大差無かった.これらの結果から,少なくとも各Rjダイズ品種によるRhizobium fredii USDA193の選択性には,グリシノール類の集積との関連性があるいは複数のファイトアレキシン類の相互作用が示唆された.しかしこれらのファイトアレキシン類の集積の違いは,根粒形成が終了した結果とも考えられ,根粒形成の初期段階(幼植物体の根)について各イソフラボノイド化合物を抽出し,その含量をさらに高速液体クロマトグラフィーにより定量する. また,幼植物根からの各種の物質が放出されていることは良く知られており,これらの物質がどのように共生に,なかでも根粒菌の根粒形成遺伝子の発現にどのように影響しているかを明らかすることを目的として,予備的に幼植物根の滲出物に対する根粒菌株の走化性を調査したところ,根粒菌株と宿主との間に親和性がある(有効根粒を形成する)組み合わせで,走化性が高いことが明らかとなった.さらに今後滲出物中のフラボノイドの組成についても調査する必要性が生じた.
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