1995 Fiscal Year Annual Research Report
乳酸菌が接着する細胞膜糖鎖とその受容体タンパク質に関する研究
Project/Area Number |
07660108
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山本 憲二 京都大学, 農学部, 助教授 (70109049)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玉置 尚徳 京都大学, 農学部, 助手 (20212045)
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Keywords | 乳酸菌 / 糖脂質 / 膜糖鎖 / 受容体タンパク質 / 酵素免疫測定法 / Lactobacillus casei / GA1 / Ceramide trihexoside |
Research Abstract |
近年、多くの病原性細菌が宿主の細胞の膜表面に存在する糖タンパク質や糖脂質の糖鎖をエピトープとして細胞に付着し、感染することが知られるようになってきた。我々は腸内細菌のなかでもヒトの腸管内で腸内フローラの形成や整腸作用などの有用な働きをすることが知られている乳酸菌(Lactobacillus属)の細胞への付着に糖鎖が関与しているのかどうかなどについて検討した。 Lactobacillus属乳酸菌と糖脂質糖鎖との結合は酵素免疫測定法を用いて調べた。先ず、Lactobacillus casei菌体をウサギに皮下注射し、得られた血清よりL.casei抗体(IgG)を精製した。次に、さまざまな糖脂質を薄層プレートに固定し、これに菌体を加えた後、抗L.casei抗体を添加し、次いで抗ウサギIgG抗体を二次抗体として添加して、免疫染色試薬によりL.caseiが結合する糖脂質を検索した。その結果、中性糖脂質であるGA1や比較的糖鎖の短い糖脂質であるCTH(Ceramide trihexoside)、Lactosylceramide、 Galactosylceramideなどに本菌が結合することがわかった。しかしながら、シアル酸を含む酸性糖脂質には全く結合せず、シアル酸の存在は乳酸菌の接着を阻害すると考えられる。ガングリオシドGM1をシアリダーゼで処理すると、反応時間とともにGA1が生成され、L.caseiの結合も見られるようになった。また、Globosideにβ-N-Acetylhexosaminidaseを作用させるとCTHが生成するとともにL.caseiの結合が見られた。以上の結果より、本菌は糖鎖の非還元末端がガラクトースである中性の糖脂質に特異的に結合することが示唆された。本菌はCTHとGA1に最も良く結合した。そこで、ラットの小腸粘膜を酸性糖脂質と中性糖脂質に分画抽出して、それぞれの画分の糖脂質についてL.caseiとの結合を調べたところ、中性糖脂質画分にのみいくつかのポジティブな糖脂質が見出された。一方、糖鎖と結合するL.caseiの膜受容体について調べたところ、熱に非常に強いタンパク質あるいはペプチドであることが示唆された。
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[Publications] K. Yamamoto et al.: "Binding Specificity of Lactobacillus to Glycolipids." Glycoconj. J.12. 562-563 (1995)
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[Publications] H. Ashida et al.: "Formation of Lyso-glycosphingolipids by Streptomyces sp." Biosci. Biotech. Biochem.59. 2028-2032 (1995)
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[Publications] 山本憲二: "微生物のグリコシダーゼとその糖鎖生物学への応用" 応用糖質科学. 42. 267-273 (1995)