1995 Fiscal Year Annual Research Report
好塩性酵素としてのサーモライシンの構造と機能の解明および応用
Project/Area Number |
07660109
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井上 國世 京都大学, 農学部, 助教授 (10223249)
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Keywords | 好塩性酵素 / サーモライシン / 金属プロテイナーゼ / プロテアーゼ / 基質特異性 / 酵素活性 / 好熱性酵素 / 酵素活性 |
Research Abstract |
1.塩類によるTLN活性化の基質特異性:Z-X-Y-amideを基本型とした基質において、XおよびYのアミノ酸残基がグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニンの順に変化した基質を有機化学的に合成した。「良い基質」と「悪い基質」では、活性に1万倍程度の差が生じる。しかし、塩類による活性化の程度は検討したすべての基質で同じであり、活性化は切断部位ペプチド結合のアミノ酸残基には依存しないことが示された。切断部位のアミノ酸残基の疎水性が大きいほど活性は大きく、これはハンシュ・フジタの線形関係で現された。塩類添加において、この線形関係の傾きは変化せず、塩は基質と酵素活性中心との相互作用に直接関与しないことが示唆された。 2.TLN活性化におけるカチオンとアニオンの効果:NaCl; NaBr; KCl; KBr; LiCl; LiBrを用いて、活性化に対するイオンの効果を比較した。カチオンではNa^+>K^+>Li^+の順となり、アニオンではCl^->Br^-の順となった。アニオンではイオン半径が小さい方が活性化効果が大きいことが示唆されたが、カチオンでは活性化とイオン半径(Na^+<Li^+<K^+)との間に直接的な関係が認められなかった。K^+イオンは、イオン半径の大きさに基づく不利を克服するだけの要因(たぶん、特異的結合)があるものと推定できる。 3.溶解度と分子量への効果:TLNは通常の緩衝液では1mg/mL程度の溶解度である。塩類添加により溶解度は飛躍的に増大する。水の構造を破壊すると考えられている塩で溶解度は増大したことから、TLNあは極度に疎水的な蛋白質であると考えられる。低角度レーザ散乱装置により、塩類存在下の分子量を測定した。塩類の有無にかかわらず、分子量は35000であり、解離会合は認められなかった。 平成7年度の計画は、ほぼ計画通りに進めることができた。これらは、学術雑誌への投稿1編(Biochemical Journal印刷中)、日本農芸化学会大会(平成7年8月)および日本生化学会大会(同9月)での口頭発表6件として発表した。本研究の骨格は、TLNの活性発現の分子機構を、塩類による活性化が手がかりに解明しようとする点にある。極度に解析的・物理化学的態度で臨むことが必須とおもわれる。この意味で、ほぼ納得のいく成果を得たと考えている。平成8年度の計画では、より具体的な形でTLNの活性発現の本質的理解に迫りうるものと期待できる。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Iba, Y., Kaneko, T., Inouye, K. et al.: "A necs system for the expression of recombinant antibody in mammalian cells" Biotechnology Letters. 17. 135-138 (1995)
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[Publications] Inouye, K., Izawa, S., Saito, A., et al.: "Effect of alcohols on the hydrolysis of colominic acid catulyzed by Streptococcus neuraminidase" Journal of Biochemistry. 117. 629-634 (1995)
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[Publications] 久保幹,蓮見文彦,井上國世: "バイオマス資源の新規利用:植物タンパク質と微生物を用いた環境浄化" Bio Industry. 13(3). 44-51 (1996)
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[Publications] Takita, T., et al: "Lysyl-tRNA synthetase from Bacillus stearothermophilus." Journal of Biochemistry. 118. 印刷中 (1996)
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[Publications] Inouye, K., et al: "Effect of amino acid residues at the cloavable site of substrates on the remarkable activation" Biochemical Journal. 314. 印刷中 (1996)
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[Publications] 森本康一,井上國世: "IgMモノクローナル抗体からの活性断片F(ab′)_2μの簡便な調製法" 生化学. 68. 42-45 (1996)