1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07660137
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平竹 潤 京都大学, 化学研究所, 助手 (80199075)
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Keywords | 抗体触媒 / 化学発光 / ジオキセタン誘導体 / β-シアノエチル基 / β-脱離反応 / トロパン骨格 / グリコシド結合加水分解 |
Research Abstract |
本研究は、化学発光を触媒するモノクローナル抗体を作製し、ラジオアイソトープを使わない超高感度なイムノアッセイや、発光性マーカータンパクとして遺伝子工学にも広く応用できる新しいタイプの化学発光性人工タンパク質を作り出すことをめざしたものである。シアノエチル基で保護したジオキセタン誘導体を基質とし、β脱離によって保護基を切断し化学発光を誘発する活性を持った抗体を誘導するために、今年度は以下の3点に分けて研究を行なった。(1)抗原抗体相補性の原理に基づいて設計した、アミノ基を主要抗原決定基とする2種類のハプテンを用いてマウスを免疫し、ハプテンに特異的な8種類のモノクローナル抗体を作製した。化学発光の検出に高感度フォトンカウンターを用いて、種々の条件下でこれら抗体の触媒活性をスクリーニングしたが、ジオキセタン誘導体の保護基を切断し化学発光を誘発する活性を持った抗体は得られなかった。そこで、(2)上述の抗原抗体相補性の原理に加え、β脱離反応の遷移状態における立体電子的因子を考慮し、立体配座の固定したトロパン骨格を有するハプテンを新たに設計し13工程で合成した。ついで、(3)合成した新たなハプテンを用いてマウスを免疫しモノクローナル抗体を作製した。このハプテンは非常に免疫原性が高く、高い抗体価を誘導し、多数のクローンが得られることが判明した。現在までに約57種類のモノクローナル抗体が得られ、なおさらに多くのクローンが得られつつある。これらの抗体は順次大量培養の後、アフィニティークロマトで精製し、化学発光を触媒する活性を指標にスクリーニングを行なっている。また、触媒活性の検出方法にも工夫を加え、シアノエチル基で保護したインジゴ系色素を合成し、β脱離を触媒する活性をハイブリドーマの培養上清の段階で検出する新しいスクリーニング法を取り入れ、スクリーニングの効率化を図っている。一方、トロパン骨格を有する本ハプテンは、シアノエチル基のβ脱離だけでなく、カチオン様の遷移状態を経る反応、とくにグリコシド結合の加水分解の遷移状態ともきわめて類似しているため、グリコシド結合を切断する活性を指標とするスクリーニングを同時に実施しているところである。今後、β脱離による化学発光とグリコシド結合の加水分解という2つの観点から抗体を選抜し、得られた抗体の遺伝子をクローニングし、大腸菌での発現系を構築する予定である。
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Research Products
(1 results)