1996 Fiscal Year Annual Research Report
生体での紫外線惹起酸化障害とその防禦における含硫黄糖脂質の関与
Project/Area Number |
07660147
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
鈴木 鐵也 北海道大学, 水産学部, 教授 (60027191)
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Keywords | 含硫糖脂質 / sulfoquinovosyldiglyceride / Euglena / 酸化的ストレス / 紫外線B照射 / 光障害 / 8-OH-deoxyguanosine / 抗酸化 |
Research Abstract |
1)E. gracilis Z (クロロプラスト含有株;植物細胞モデル)とE. gracilis SMZ (クロロプラスト欠損株;動物細胞モデル)の2株を2,000〜10,000Luxの光照射条件下および暗黒条件下で培養、euglena gracilisにおける含硫糖脂質SQDGの変動および脂質過酸化を指標に可視光障害について検討した。その結果、光照度にともなうSQDG含量の変動は認められなかったが、SQDGを構成する高度不飽和脂肪酸/飽和脂肪酸(P/S)比が光照度の増加にともない低下することが明らかになった。光照度の増加に伴うSQDG画分中の飽和脂肪酸含有量の増加は、光障害に対する予防的適応とも考えられた。また光照度変化によるTBARSおよび抗酸化物質の量的変動の結果から、Z株とSMZ株では、光障害に対する防御機構が異なること、活性酸素種の生成部位および量が異なることが示唆された。興味深い結果として10,000Luxで培養した動物型のSMZ株では不飽和脂肪酸含量ならびに脂質過酸化の指標TBARS値の顕著な減少が認められたのに対し、暗黒条件で生育したそれでは、不飽和脂肪酸含量は高かった結果も、可視光が惹起する障害と脂質過酸化との関連ならびに光ストレスに対する動物型細胞の応答を示すものであると考えられる。 2)光照射条件を異にするZ株、SMZ株に対する紫外線B照射と細胞障害発現のDNA損傷との関連。 上記4種類の細胞を薄膜状にシャーレを撒き、これに対して紫外線Bを一定時間照射し、HPLC法により8-ヒドロキシ-2'-デオキシグアノシン(8-OH-dG)生成量を比較した。測定の結果、全ての細胞でUV-B曝露時間に比例して8-OH-dG量は増加したが、Z-LD(明暗12h周期)型での生成量が最も低く、さらにZ-LD型でUV-B惹起脂質過酸化の抑制が認められた。また、すべての細胞においてUV-B曝露前に生成している8-OH-dG量は10^3dG残基当たり9残基でヒト細胞およびラット臓器に存在する8-OH-dG量は10^5dG残基当たり数〜数十残基であるという報告と比べEuglena gracilisでは圧倒的に存在比が高いことがわかった。この数値は、老化・寿命の観点からスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性との関連の下に更に詳細な検討を行っている。 3)平成7年度、8年度の研究成果を総合してSQDGの役割はラジカル惹起過酸化に対してはラジカル捕捉効果、紫外線B照射での一重項酸素による細胞障害に対しては、自らが優先的に過酸化されてAsA-Pxによる処理されることにより、他の生体脂質成分を保護しているのではないかという抗酸化システム仮説を提唱した。
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Research Products
(1 results)