1995 Fiscal Year Annual Research Report
食品系および生体系膜モデル中の脂質分子のコンフォメーションと酸化的損傷
Project/Area Number |
07660164
|
Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松村 康生 京都大学, 食糧科学研究所, 助教授 (50181756)
|
Keywords | エマルション / ミセル / リポソーム / 不飽和脂肪酸 / 脂質酸化 |
Research Abstract |
水中分散系における不飽和脂肪酸の酸化反応の受け易さが、脂肪酸中2重結合の数と位置によってどのような影響を受けるのか、検討を行った。ω-3、ω-6、ω-9系列の幾つかの脂肪酸メチルエステルを標品として使用したが、市販品として入手しにくいミ-ド酸(20:3,ω-9)や8,11,14,17-cis-イコサテトラエン酸(20:4,ω-3)などのメチルエステルについては、これらの脂肪酸を高度に生産している微生物菌体を供給源として調製した。それぞれのメチルエステルと非イオン性の界面活性剤溶液より調製したエマルション中でラジカルを発生させ、数日間にわたって過酸化物価の上昇や脂肪酸の減少量を追跡した。その結果をα-リノレン酸(18:3,ω-3)とγ-リノレン酸(18:3,ω-6)のように、炭素鎖数や2重結合の数が同じで、2重結合の位置のみ異なっている脂肪酸のペア-について比較したところ、あまり顕著な差は認められなかった。すなわち、脂肪酸の2重結合の位置はエマルション系における脂質の酸化安定性とあまり関連していないという結果が得られた。これは、ω-3系列のα-リノレン酸に比べ、ω-6系列のγ-リノレン酸の方が水中分散系では酸化されやすかったという以前の報告と異なる結果であった。このような矛盾は実験に用いたエマルションの存在状態の違いによるものと考えられる。そこで、異なる条件下で調製したエマルションの初期の酸化反応を酸素消費量により追跡した結果、脂質の酸化の受け易さは乳化剤の種類や量、油滴の大きさなどによって変化することが示された。そこで、現在では、分散状態の影響をなるべく排除するため、それぞれのメチルエステルより脂肪酸を調製し、それを界面活性剤溶液でミセル状に分散させたものを用いて実験を行っている。この場合には、脂質はナノサイズのレベルできわめて均一に分散されており、酸化反応のキネティクスの客観的な評価も可能となっている。
|