1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07660186
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中田 誠 新潟大学, 農学部, 助教授 (80217744)
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Keywords | 亜高山帯針葉樹林 / 樹種分布 / 更新様式 / 地形解析 / 土壌調査 / オオシラビソ / コメツガ / ブナ |
Research Abstract |
本年度は,北陸地方で最大規模の亜高山帯針葉樹林が分布する新潟県苗場山で研究を行った。現地調査ならびに航空写真と地形図による樹種分布の解析の結果,湿原周辺の傾斜が緩やかな,やや湿性的な立地では,より海抜の高い場所から海抜1300〜1350mあたりまでオオシラビソ林が分布していた。それに対して斜面上では,より海抜の低い場所から海抜1750mあたりまでブナが生育しており,山地帯(ブナ帯)と亜高山帯(オオシラビソ帯)の境界高度が,地形(傾斜)に起因した土壌の水分環境の違いに応じて大きく変動していることが確認できた。土壌調査の結果,ブナ林では暗色系褐色森林土が分布していたが,このブナ林は山地帯としてはかなり高海抜地に分布するものである。一方,オオシラビソ林では黒色土に類似した土壌が分布していたが,その土壌断面中にはポドゾル化作用による溶脱と集積の傾向が認められた。 苗場山の小松原湿原付近のオオシラビソ林において,林分構造を調査する目的で固定プロットを設定した。このオオシラビソ林は,林冠が鬱閉しない疎な林分で,林床はチシマザサもしくはチマキザサによって密に被われていた。この林分中にはコメツガが所々に混生していたが,このコメツガは通常の土壌の上には生育せず,倒木による根返り跡のマウンド上や,枯死株,巨磔の上などのササが生育できない場所に分布していた。稚樹の調査でも,オオシラビソがプロット内に普遍的に分布するのに対し,コメツガは前述のマウンド上などで,その上にタチハイゴケやイワダレゴケなどのコケ類が生育するような場所に分布が限られていた。このように,本州中部太平洋側の亜高山帯中〜下部で優占するコメツガが,日本海側の亜高山帯で局所的な分布しか示さなくなる実態やその原因を,オオシラビソとの更新様式の違いから解明できそうである。
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