1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07660204
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Minami Kyusyu University |
Principal Investigator |
北村 泰一 南九州大学, 演芸学部, 助教授 (90214816)
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Keywords | 再曝気 / 溶存酸素 / 渓流環境 / 水質保全 / 物質移動 / 対流輸送 / 乱流拡散 / 渓流地形 |
Research Abstract |
再曝気は自然渓流における自浄機能の1つであると見なされ,砂防工事においても,再曝気による大気から水中への酸素の供給およびその後の輸送過程を正しく評価し,渓流環境整備に反映させなければならない。平成7年度までの研究によって,自然渓流の淵では落下流による気泡の取り込みと水面の撹乱によって流下方向への酸素の供給が進み,その度合いは接触面積の拡大とともに増加し,溶存酸素濃度分布は流心部で高く渓岸部で低いものとなるが,地形的要因などある条件の下では横断方向への酸素の輸送が卓越し流心部と渓岸部での溶存酸素濃度の差が小さく濃度分布がほぼ一様になり,この原因として乱流拡散による物質輸送に類似する現象が自然渓流の淵においても生じている可能性があると示唆された。 以上のような経緯のもとに平成8年度研究においては,自然渓流における淵を乱流場と見なし,Taylorの乱流拡散理論を適用し,乱流拡散による溶存酸素の横断方向への輸送過程とそれを支配する要因を明らかにすることを目的とした。その結果,自然渓流ではLagrange的流速成分は淵の主要地点(落下部より慨ね1m下流地点)の流れに相関があるものと仮定し,さらに拡散時間に淵の容積を流量で割った値として定義した滞留時間を当てはめ溶存酸素の混合現象と関連づけたところ,自然渓流の淵の流れにもTaylor理論は比較的適合することが確かめられた。さらに,水面付近の十分な撹乱と長期波と短期波が複合する自己相関をもつ流れの存在によって,水中への溶存酸素の供給とその後の乱流拡散による混合が促進されることが明らかになった。乱流拡散現象は,単に流量のみならず水面撹乱の強さの尺度である地形落差や流れ込み地点の河床勾配にも影響されることから,溶存酸素の供給と拡散が適切に行われるように低水路の幅や流れ込み地点の河床勾配,落差,あるいは魚道の構造に対して工夫を施すことが渓流環境保全上の1手法となることが示唆された。
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