1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07660226
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Research Institution | Kyoto prefectural University |
Principal Investigator |
飯田 生穂 京都府立大学, 農学部, 講師 (40046503)
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Keywords | Wood / Transverse Compression / Large deformation / Anatomical deformation / Liquid Penetration / Pit Fracture |
Research Abstract |
近年、木材の横圧縮性の特徴を利用した加工法、材質改良、薬液注入促進法等が積極的に検討されている.これらの加工、あるいは処理方法を合理的に、かつ有効に行うためには、木材の横圧縮大変形による細胞、細胞集合体、年輪単位の変形の特徴、様式を明確にして、適正な処理を施すことが極めて重要である. 供試4樹種(スギ、ヒノキ、ベイマツ、カラマツ)による平成7年度の検討から、以下のことが明らかになった. 1)年輪ひずみの主体は、圧縮率50%においても、ベイマツ材の一部条件を除き、早材部の仮道管によって達成され、晩材部細胞の変形は認められない.2)半径方向に圧縮した材の年輪内の変形は、早材部の局所位置で座屈細胞列が現れるが、座屈発生位置は、年輪構造、特に晩材の多少と関係を示して現れることが示唆された.3)細胞の変形は、仮道管半径壁の褶曲タイプ(S字型変形)とせん断変形タイプに2大別できる.この変形は、仮道管のR/T比と密接な関係を示す. しかし、7年度の検討から、直接観察法では、高い倍率での観察ができないこと、観察が極めて煩雑で、再三にわかって同じ細胞を鮮明に観察ができないことなども認めた.そこで8年度は新たにレプリカ法を導入して検討を加えた.またSEM観察も行った.その結果、8年度の検討から以下のことが明らかになった. 1)木材半径方向、45度方向、接線方向で、圧縮による年輪・細胞の変形様式が大きく異なり、それぞれの方向の変形の特徴を明確にした.2)木材半径方向および45度方向の圧縮の場合、仮道管細胞の変形は壁孔から率先して変形が進行し、閉塞壁孔がはく離、破壊されることを認めた.また45度方向の圧縮の場合、圧縮率が大きくなると晩材細胞、放射組織近辺の仮道管細胞の壁に亀裂の現れるのと認めた.3)仮道管細胞壁中で特異な構造をしている壁孔は、樹種特性を示すものの、そのはく離、破壊の特長を明確に認めた.また閉塞壁孔の質的性質に相違があることを明らかにした.
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[Publications] 飯田生穂、福田彰: "横圧縮大変形を与えた木材の乾燥特性" 木材工業. 50. 112〜116 (1995)
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[Publications] 飯田生穂、池内晃、今村祐嗣: "圧縮処理材の液体浸透(第4報)、針・広葉樹数種の浸透促進効果について" 木材学会誌. 41. 811〜819 (1995)
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[Publications] 飯田生穂、今村祐嗣: "圧縮処理材の液体浸透(第3報)、圧縮セット材およびその回復材の強度性能" 木材学会誌. 41. 1165〜1172 (1995)
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[Publications] 金子真一、飯田生穂: "立木注入法による材の染色(第5報)、染色材の退色防止について" 京都府立大学学術報告・農学. 47号. 24〜31 (1995)
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[Publications] 石丸 優ほか3名: "各種膨潤状態における木材の動的年弾性" 木材学会誌. 42. 250〜257 (1996)
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[Publications] 飯田生穂ほか4名: "圧縮処理材の液体浸透(第5報)、繰り返しの圧縮処理、注入薬剤の種類及び材の木取りが吸液量に及ぼす影響" 木材学会誌. 42. 581〜588 (1996)
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[Publications] 日本木材学会40周年記念出版事業会編: "「すばらしい木の世界」分担執筆" 海青社, 103 (1995)
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[Publications] 屋我嗣良、河内進策、今村祐嗣編: "木材科学講座“保存・耐久性"分担執筆" 海青社(印刷中), (1997)