1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07660245
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
田辺 信介 愛媛大学, 農学部, 助教授 (60116952)
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Keywords | 有機スズ化合物 / ブチルスズ化合物 / 海棲哺乳動物 / 歯鯨類 / 鰭脚類 / 海洋汚染 |
Research Abstract |
本研究の目的は、現在大きな社会問題となっている有機スズ化合物について、その海棲哺乳動物における汚染と蓄積の特性を明らかにすることにある。具体的には、歯鯨類や鰭脚類を対象に、1)汚染の体内分布、2)蓄積の性差と年齢変動、3)グローバル汚染の実態把握などについて研究を展開し、以下のような成果を得た。 1)まず、スナメリとトドを供試して、ブチルスズ化合物の臓器・組織分布を調べたところ、肝臓に高濃度の分布が認められたが、トドではそれを上回る蓄積が毛で観察された。有機スズ化合物の体内分布は、有機水銀と類似しており、有機塩素化合物とは大幅に異なることが明らかとなった。 2)歯鯨類に比べ、トドの肝臓中のブチルスズ化合物濃度は明らかに低く、この結果は、鰭脚類の代謝分解力が強いことに加え、換毛による有機スズ化合物の排泄があることを示唆している。 3)有機塩素化合物と異なり、ブチルスズ化合物では蓄積濃度の明瞭な雌雄差は認められなかった。このことは、出産や授乳によるブチルスズ化合物の母子間移行量が少ないことを示している。 4)ハナゴンドウとトドについてブチルスズ化合物の年齢変動を調べたところ、トドは明瞭な傾向を示さなかったが、ハナゴンドウでは未成熟個体で加齢に伴う濃度上昇が認められた。歯鯨類は、換毛による排泄がないため、多量のブチルスズ化合物を取り込む成長期に年齢蓄積が起こるものと推察された。 5)西部太平洋、インド洋産の歯鯨類、日本近海やアラスカ産のトドについてブチルスズ化合物汚染の地域比較を試みたところ、わが国の内海や周辺海域に分布している種は相対的に高い蓄積濃度を示し、有機スズ化合物による日本周辺海域の汚染がかなり深刻化していることを明らかにできた。
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[Publications] 岩田久人・水野恭彦・田辺信介・立川 涼: "鯨類に残留する有機スズ化合物の体内分布" 環境化学. 5. 524-525 (1995)
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[Publications] Iwata,H.,Tanabe,S.,Mizuno,T.and Tatsukawa,R.: "High accumulation of toxic butyltins in marine mammals from Japanese coastal waters" Environmental Science and Technology. 29. 2959-2962 (1995)
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[Publications] Kim,G.,Lee,J.,Tanabe,S.Iwata,H.Tatsukawa,R.: "Specific accumulation and distribution of butyltin compounds in various organs and tissues of Steller sea lion" Marine Pollution Bulletin. (in press). (1996)