1996 Fiscal Year Annual Research Report
有明海と流入河川の希少魚類、エツおよびシラウオ類の生態に関する研究
Project/Area Number |
07660248
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
松井 誠一 九州大学, 農学部, 助教授 (60038297)
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Keywords | エツ / アリアケヒメシラウオ / アリアケシラウオ / 筑後川 / 産卵場 / 成熟 / 希少魚類 / 飼育 |
Research Abstract |
有明海と流入河川にしか生息しないエツ、アリアケヒメシラウオおよびアリアケシラウオについてその生態研究を行い、アリアケシラウオはその産卵場環境だけの研究に終わった。その原因はかなりの採集努力を行なったにもかかわらず解析するほどの標本が採集されないためで、そこまで資源が減少し、希少性が高くなっている。いずれも筑後川の河川感潮域だけで産卵し、付着卵を産み、シラウオ2種の産卵基質は粗砂からなり、有機物の少ない水通しの良い環境であることを実証した。アリアケヒメシラウオの卵巣重量、卵径組成、卵巣の組織学的観察によって成熟過程を調査した結果、3月から成熟が始まりすでに産卵するものも出現し、7月まで産卵することを明らかにした。また、1尾が複数回、1回に300-700粒の卵を産むと推察され、人工授精の受精卵数でもほぼ一致した。エツは魚体が傷つきやすく、その飼育環境も不明のため飼育例がない。筑後川感潮域で漁獲された親魚を使用し、人工受精した卵を継続して飼育し、現在、7カ月を経過している。その過程で、飼育条件として全長約15mmまでは淡水で、それ以後は1/3海水程度の汽水でも成育し、餌料はシオミズツボワムシを全長15mm頃まで、以後アルテミアと直径0.25mm、0.4mmの微粒子飼料を用いた。しかし、生残率が1%以下と低く、現在の全長が50〜100mmであり、天然のものがすでに150mm以上になったものが出現し、成長も正常でないなど解決されるべき問題点が残された。昨年度アリアケヒメシラウオを卵から飼育し、本年度4月に水槽内自然産卵を試み成功しなかったものの人工授精はうまくいきその稚魚も順調な成長をした。
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