1995 Fiscal Year Annual Research Report
世界コメ貿易市場の特徴に関する経済学的・政策学的研究
Project/Area Number |
07660290
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
辻井 博 京都大学, 農学部, 教授 (60027589)
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Keywords | コメ貿易 / コメ政策 / 世界コメ市場 / 薄い市場 / コメ市場の開放 / 自給政策 / 自由貿易 / 貧困 |
Research Abstract |
本研究の目的は(1)世界コメ貿易・国内市場の特徴を、他の主要穀物の貿易・国内市場との比較で、政策、技術・サステェイナビリティー、人口、経済成長、所得分配、自然資源と気候の視点から提示。(2)日本のコメ市場開放とコメ輸入の増大の、国際貿易米価水準と同価格の変動性への影響およびアジア諸国の国内米価水準と変動性さらにアジア諸国の低所得層の福祉への影響の解明。(3)これら(1)、(2)の研究結果をもとに、アジアコメ市場・経済との関係で日本のコメ政策のあり方の考察、である。平成7年度には、世界コメ貿易市場の薄さ・不安定さ・頼りなさを他の主要穀物である小麦ととうもろこしの貿易市場との比較で、政策、技術、人口、経済成長、所得分配、自然資源の視点から明らかにした。方法としては、定性的経済分析、計量経済分析、統計分析、記述分析を使用した。政策面では、アジア諸国のコメ政策がコメ自給・国内コメ供給米価安定化政策であるのに対して、アメリカやEU諸国のコメ、小麦やとうもろこしにたいする政策は過剰生産・ダンピング輸出政策という特徴を持っていることを示し、アジアと欧米のそれら政策の規程要因を明らかにした。技術面では、生産面の技術進歩・単収増の最近の停滞の穀物供給への影響とこの停滞の規程要因を究明した。人口・経済成長面ではこれらの穀物需要の爆発に及ぼす影響を、中国に注目しながら検討した。所得分配面では特にコメ貿易市場の自由化と日本、韓国、フィリピンなどのWTO体制の下のコメ輸入の増加が、国際貿易米価およびアジア諸国の米価の上昇と不安定化を通じて、アジアに集中する貧困・飢餓人口に及ぼす悪影響を検討した。自然資源に関しては耕地の絶対的減少が70年代中期から世界で進行していることの、穀物供給への含意を検討した。これらの研究の総括として、2020年におけるコメ及びその他穀物の大幅は供給不足を予測した。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Hiroshi Tsujii: "Characteristics of and Trade Conflicts in the International Rice Market-ACase Against the Free Trade Postulate-" The Natural Resource Economic Review. 1. 119-135 (1995)
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[Publications] 辻井 博: "アジアの成長と食糧問題" エコノミスト. 74-9. 156-157 (1996)
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[Publications] 辻井 博: "WTO体制への発展途上国の農政対応" 農業と経済. 61-4. 32-42 (1995)
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[Publications] 辻井 博: "第4章、大内・佐伯編『揺れ動く世界のコメ需給』" タイの米-自給的米輸出国の選択肢-, 325 (1995)