1996 Fiscal Year Annual Research Report
製造物責任法(PL法)の農業に与えるインパクトに関する国際比較研究
Project/Area Number |
07660292
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Research Institution | KOCHI UNIVERSITY |
Principal Investigator |
西井 一成 高知大学, 農学部, 教授 (80106715)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松島 貴則 高知大学, 農学部, 助手 (70253341)
宮守 則之 大阪法律ゼミナール, 代表取締役(研究者)
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Keywords | 製造物責任法(PL法) / バイオ・テクノロジー / 農業 / R-DNA |
Research Abstract |
“製造物責任法(PL法)でいう「製造物」とは、製造又は加工された動産をいう"とされ、自然界で産出される自然産物については、人為的な処理や加工がなされていないものとされ、当該法律の客体とされていない。したがって、一般的に未加工の農林畜水産物等は当該法律の対象とならない。作物の栽培、種子の増殖、水耕栽培、養殖水産物等も、基本的には自然の力を利用したものであって、「製造又は加工」された動産にあたらないと解されている。 ところが、バイオ・テクノロジーを利用した農林畜水産物、更に、ポスト・ハーベストで問題とされる、残留農薬農産物や放射能照射させた農産物等を、製造物責任法でいう「製造物」に含めるべきかどうかは問題となるところである。PL法でいう「製造物」にそれらが該当するかどうかを検討した。 なお、バイオ・テクノロジーは、先進諸国にとっては、21世紀の産業をリ-ドすべきいわゆるストラテジック・インダストリーである。PL法の無過失責任を適用することによって、経済及び科学的発展の芽を摘むことは、人類にとって重大な損失である。これについて、欧米及び日本国内の関連資料を収集し、バイオ・テクノロジーの最先端をいくアメリカの考え方を参照にしながら、バイオ農林畜水産物に対する消費者の法的保護を「安全」という見地から、PL法のみならず総合的な法的観点に立って検討した。 その結果、バイオ農作物を原因として環境ならびに人間の生命・身体・財産などに被害を与えた場合、単なる農産物とは異なり、製造物責任法の適応が存在すること、さらに開発危険の抗弁の適応も考えられた。しかし、因果関係の科学的証明が非常に困難であり、さらに実際の損害の認定とその回復も難しく、被害を被った消費者を救済するため、継続的な行政監視と欠陥・因果関係の証明、損害の認定などについては証明責任を転換させる等の方法が重要であると考えられた。
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