1995 Fiscal Year Annual Research Report
南西諸島における村落共同体の構造と経済機能に関する研究
Project/Area Number |
07660297
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
仲地 宗俊 琉球大学, 農学部, 助教授 (70180312)
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Keywords | 集落の二重構成 / 祭祀による家と家の関係 / 個人と個人の関係 / 年齢階梯 / ユイ労働 / 模合 / 共同売店 |
Research Abstract |
本研究の目的は,南西諸島(沖縄・奄美)における村落共同体の構造とその経済機能を明らかにすることにある。研究の方法は,文献,資料による分析を行うとともに五つの集落において実態調査を行った。調査した集落は,沖縄本島国頭村奥集落,久米島兼城集落(資料のみ),八重山諸島波照間島,奄美大島瀬戸内町嘉鉄集落,喜界島阿伝集落である。研究の結果は以下のとりである。 南西諸島の集落においては,家と家の関係だけではなく,個人個人の関係も重要な要素をなしており,家と家,個人と個人という二重の関係によって構成されていることがまず指摘できる。家と家との関係は祭祀関係による結び付きであり,モトヤと呼ばれる家とそこから分かれた家の関係である。この関係はいわゆる本家・分家関係と混同されやすいが、ここではあくまでも祭祀上の本・分関係であることが特徴である。一方,ユイ労働,模合,金銭または農地の貸し借りといった経済的関係は個人同士の結び付きによってなされる場合が多い。また集落組織の運営は,個人を基礎とした年齢階梯に基づいている例が見られた。 経済の面では,かつてはユイによる労働交換,模合が盛んに行われた。しかしこれらは集落全体としての取り組みではなく,集落内の地縁または気の合つた者同士による活動であった。経済,特に生産の面での集落としての機能は弱いということが指摘しうる。もっとも,沖縄本島北部と八重山では集落を単位とした共同売店が組織されており,その成立の条件は今後の研究課題である。全体として,南西諸島における共同体は「家」と「家」の関係ではなく,個人の結び付きがその基盤にあると考えられる。このことは経営に対する束縛が弱いことを意味するが,一方では個別分散の傾向を生み出し,共同の事業あるいは経営を行う上では弱点となっている。
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