Research Abstract |
本研究は,持続可能な傾斜地農業を確立しようとする観点から,土壌侵食形態,耕作様式,道・排水路配置などを調査し,さらに農家の保全作業や営農に対する意向調査を行って、土地利用形態との関係を明らかにしようとするものである。そのために,岐阜県高鷲村上野高原の大根畑を対象として土地利用形態の詳細な調査を行った。まず、圃場の利用状況及び畝立様式や方向をラジコン航空写真から判読し,現地踏査で補完しながら土地利用形態の実態を明らかにした。また,現地において土壌侵食痕跡を確認し,流亡土砂の発生源を追跡した。さらに,耕作農家の意向調査を行い,一連の調査結果をふまえて持続的な傾斜地農業を継承することができる土地基盤整備や営農面からみた保全対策のあり方に言及した。本研究の成果として,次のような新たな知見が得られた。 1.畝立の様式は、ほぼ圃場の全面にわたり,境界に沿って畝を立て,畝間の流末が直接法面等に排水されたり,枕畝で導水されることが多く,流末部が土壌侵食の根源になっている。 2.裸地圃場の侵食状況と対比すると,畝を立てることによって土壌侵食を大きく抑制する効果がある。 3.大半の農家は土壌侵食を抑制するように畝立を工夫しており,圃場の基盤形態に根本的な問題がある。 4.農地保全意識の高い農家と作業性や排水を重視して保全意識の弱い農家がほぼ半々であるが,排水処理にはほとんどの農家が注意を払っている。 5.連作の回避や地力の回復を図るには輪作が有効であるが,輪作体系に移行するための耕作地がなく,開畑が必要である。 6.基盤対策として,圃場形態,道路,排水路,土砂溜,土層構造の改善整備が必要であり、営農対応として,耕地分散の解消,畑面境界部の草生化,連作障害回避の農薬・肥培管理,土壌構造改善が重要である。
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