鶏伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス感染による免疫抑制機構に関する分子生物学的研究

1996 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 07660402
• Research Institution: Gifu University
• Principal Investigator: 平井 克哉 岐阜大学, 農学部, 教授 (30021702)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 山口 剛士 岐阜大学, 農学部, 助手 (70210367)
• Keywords: 免疫抑制 / 鶏のウイルス / 鶏伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス

Research Abstract

伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(IBDV)による免疫抑制の機序を分子生物学的に解明するため、IBDVのウイルスレセプターおよびウイルスの病原性因子について解析した。
1.ウイルスレセプターの解析
ビオチン標識した超強毒型IBDV OKYM株を用い、各種細胞に対する吸着およびレセプターの生化学的性状をフローサイトメトリーにより解析した。細胞は、鶏白血病由来B細胞株およびマレック病由来T細胞株を用い、感受性細胞のプロテアーゼ、ホスホリパーゼ、グリコシダーゼ、ツニカマイシン、スワインソニンおよび過ヨウ素酸処理によりウイルスレセプターの生化学的性状を検討した。また、ウイルス吸着と細胞表面(s)IgMとの関連についても検討を行った。
各細胞への吸着率は感染率と良く相関し、B細胞由来のLSCC-BK3細胞が最も感受性が高かった。また、ウイルス吸着陽性細胞はsIgM陽性で、ウイルスの吸着はプロテアーゼおよび蛋白質への糖鎖修飾を阻害するツニカマイシンおよびスワインソニンにより阻止された。
以上のことから、IBDVの細胞向性がウイルスレセプターにより決定されている可能性が示唆され、ウイルスレセプターはsIgM陽性細胞に特異的に発現される糖蛋白質である可能性が推察された。
2.ウイルスの病原性因子に関する解析
弱毒株を鶏で継代し、継代前後の塩基配列と病原性の変化を解析することによりウイルスの病原性因子を検討した。
継代が進んだ弱毒株を接種した鶏には、ファブリキウス嚢に萎縮が観察された。また塩基配列の解析から、前駆蛋白質VP2領域の253番目のアミノ酸残基に継代過程でHis->Glnのアミノ酸置換の生じることが予測された。
以上の成績から、ウイルスの病原性および鶏体内での増殖に前駆蛋白質VP2領域の253番目のアミノ酸残基が重要な役割を持つことが推察された。

Research Products

• [Publications] Yamaguchi,T・・・Hirai,K.: "In vitro attenuation of highly virulent infectious bursal disease virus : Some characteristics of attenuated strains." Avian Dis.40. 501-509 (1996)
• [Publications] Yamaguchi,T・・・Hirai,K.: "Epitope mapping of capsid proteins VP2 and VP3 of infectious bursal disease virus." Arch.Virol.141. 1493-1507 (1996)
• [Publications] Yamaguchi,T・・・Hirai,K.: "Identification of sequence changes responsible for the attenuation of highly virulent infectious bursal disease virus." Virology. 223. 219-223 (1996)
• [Publications] Yamaguchi,T・・・Hirai,K.: "Sequence and phylogenetic analyses of highly virulent infectious bursal disease virus." Arch.Virol.(in press.). (1997)
• [Publications] 山口剛士: "鶏伝染性ファブリキウス嚢病(分担)," 清水悠紀臣他編「獣医伝染病学」第4版,1 (1995)
• [Publications] 平井克哉,山口剛士: "鶏の伝染性ファブリキウス嚢病の現状と展望." 中日禽畜疫苗展望会論文集, 7 (1996)