1996 Fiscal Year Annual Research Report
クサリフクロカビ目の歯に起因するエビ類の真菌病に関する研究
Project/Area Number |
07660429
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Research Institution | Nippon Veterinary and Animal Science University |
Principal Investigator |
畑井 喜司雄 日本獣医畜産大学, 獣医畜産学部, 教授 (30164841)
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Keywords | クサリフクロカビ / ヨシエビ / クルマエビ / Haliphthoros milfordensis / Haliphthoros hiroshimaensis / Halocrusticida / 真菌病 / 甲殻類 |
Research Abstract |
クルマエビのゾエア幼生から分離された1株(A株)、およびヨシエビの卵とミシス幼生から分離された2株(B株、C株)について詳細にその性状を検討した。菌の分離は菌の感染が確認された卵および幼生をPYGS寒天培地に接種し、細菌の発育を抑制するために抗生物質を散布し、25℃で培養する方法で行った。同定は主にKarling(1981)に従って行った。全ての分離菌は海水中で明瞭なfrafmentを形成し、その内部に遊走子が形成されたことからHaliphthoros属に分類された。A株とB株はほぼ同様な菌学的特徴を示した。すなわち、菌糸の径はほぼ均一で約6-50μm、遊走子形成は海水移入後約12時間で起こった。放出管は1個のfragmentから1本形成され、長さが約600μm以内、幅が約5-15μmであった。遊走子は側生的に等長な2鞭毛を有し、発芽は休眠後約8時間後から認められた。これらの特徴からAとB株はHaliphthoros milfordensis Vishniacに同定された。C株は1mmに達する程の極めて長い放出管を形成することが特徴で、しかも菌糸の径が比較的不規則であった。このような特徴は既知のHaliphthoros属の菌種とは明らかに異なった。またC株の発育は他の2株より遅く、しかも人工海水の代わりにKClで作製した培地には発育しなかった。このようなことからC株はHaliphthoros属の新種であると判断し、広島県内から分離された菌であったことからH.hiroshimaensisと命名することにした。各株の発育適温試験を5、10、15、20、25、30、35℃で行った結果、AおよびB株は30-35℃で、またC株は35℃で最も良好な発育を示した。これらの結果は、本病が水温の高い夏期に流行することと一致していて興味が深い。なお、Haliphthoros属の菌だけではなく、Halocrusticida属に分類される菌も培養されているがそれらの菌の詳細な検討は今後の課題として残された。
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