1997 Fiscal Year Annual Research Report
顕微解剖により剖出した含水状態での染色体高次構造の解析
Project/Area Number |
07670015
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Research Institution | TOTTORI UNIVERSITY |
Principal Investigator |
飯野 晃啓 鳥取大学, 医学部, 教授 (50031969)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲賀 すみれ 鳥取大学, 医学部, 助手 (60116358)
名黒 知徳 鳥取大学, 医学部, 助教授 (50032230)
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Keywords | 染色体 / 含水試料 / 低真空走査電顕 / 反射電子像 / 高次コイル構造 / 染色体バンド構造 |
Research Abstract |
これまでの本研究によって開発した、含水染色体観察のための低真空走査電顕法(低真空SEM法)を用いて、チャイニーズハムスター培養細胞から剖出した中期染色体を詳細に観察し、従来の乾燥標本で観察された染色体構造と比較検討をした。また、今年度の実験において、当初予想もしなかった染色体バンド構造が含水染色体で観察され、バンド形成機構解明の手がかりとなる、新たな研究の糸口が見つかった。 1.含水染色体と乾燥染色体で観察された立体構造の比較 従来のSEM法では、染色体乾燥標本の表面構造をとらえる二次電子像により、中期染色体は不規則におりたたまれたクロマチン線維の凝集体として観察された。しかし、低真空SEM法では反射電子を検出して像を得ることができるため、含水染色体の表面構造のみならず内部構造もとらえることができた。そして、含水状態では、中期染色体は特殊な処理をしなくても、本来、高次のコイル構造を呈することが明らかになった(第53回日本電顕学会学術講演会:平成9年5月、尼崎にて発表)。 2.含水染色体における染色体バンド構造の観察 染色体バンド構造については、これまではほとんど光顕レベルでしか研究がなされておらず、その形成機構についても十分解明されていない。ところが、今回の研究によって、含水状態の染色体にバンド構造が認められ、しかもその立体構造も保たれたまま同時に観察できることが分かった。このことは、染色体バンド形成機構が電顕レベルで形態学的アプローチにより明らかにできる可能性をもたらしたといえる(第48回染色体学会:平成9年9月、札幌にて発表、第103回日本解剖学会総会:平成10年3月発表予定)。 本研究は、結果的に、染色体のみならず一般の含水生物試料の低真空SEMによる研究方法を発展させることにも貢献した。
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[Publications] 田中敬一: "低真空走査電子顕微鏡を用いての染色体構造研究における白金ブルー染色の効果" 電子顕微鏡. 32(Supplement). 142 (1997)
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[Publications] 飯野晃啓: "染色体の電子顕微鏡観察法-透過電顕法-" 臨床検査. 41(8). 927-931 (1997)
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[Publications] 飯野晃啓: "染色体の電子顕微鏡観察法-走査電顕法-" 臨床検査. 41(9). 1055-1061 (1997)
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[Publications] Inaga.,S.: "Helical coils and band-like structure of Chinese hamster hydrous metaphase chromosomes by LVSEM." Chromosome Science. (in press).
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[Publications] Tanaka,K.: "Recent Advances in Microscopy of Cells,Tissue and Organs" P.M.Motta, (1997)