1996 Fiscal Year Annual Research Report
小腸細胞性レチノール結合たん白質Type IIの遺伝子発現と生理作用に関する研究
Project/Area Number |
07670089
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
高瀬 幸子 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 教授 (10046196)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
合田 敏尚 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助手 (70195923)
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Keywords | 細胞性レチノール結合たん白質タイプII / mRNA / レチノイドXレセプター(RxR) / ペルオキシゾーム増殖因子活性化レセプター(PPAR) / Caco-2細胞 / レシチン:レチノールアシル転移酵素 |
Research Abstract |
1.転写調節因子(脂肪酸)によるCRBBP (II)遺伝子の5'上流プロモーター領域(RXREとRE)への核内タンパク質の結合量の増大とその遺伝子発現との関連がin vivoの実験系により証明された:ラットにコーン油を含む高脂肪食を2週間投与し、対照群に低脂肪食を1週間、さらに無脂肪食を1週間投与し、これらラット空腸粘膜よりintactな核を調製した。CRBBP (II)遺伝子の5'上流のプロモーター領域(RXREとRE)をPCR法により増幅してクローニングしたものと、先の核からの核抽出物と反応させてゲルシフトassayしたところ、RXREとREのそれぞれに核タンパク質が結合し、その結合量は高脂肪食ラットで増大した。それらの結合は核内因子のRXRα抗体により消失した。故に、高脂肪食投与ラットの小腸の細胞核では、CRBP (II)遺伝子のプロモーター領域にRXRを含む核内レセプターの複合体、おそらくRXR-PPARのヘテロダイマーの結合量増大を介するCRBP (II)遺伝子発現の促進が示唆された。 2.ヒト結腸ガン由来細胞株Caco-2を用いて、CRBBP (II)遺伝子の5'上流プロモーター領域(RXREとRE)への核内因子(RXR-PPAR)結合とその遺伝子発現との関連が証明された:peroxisome proliferator-activated receptor (PPAR)のactivatorとしてアラキドン酸のアナログであるeicosatetraynoicacid (ETYA)やアラキドン酸によりCaco-2細胞のCRBP (II)遺伝子発現が高まった。そのCRBP (II)遺伝子発現の増大機構の解明を試みた。Caco-2細胞をActinomycin Dで処理することによりそれらPPARのactivatorによるCRBP (II) mRNAの発現量は著しく低下した。従って、脂肪酸はCRBP (II)遺伝子の転写を促進することが明らかとなった。ゲルシフトassayにより、ラット空腸細胞核タンパク質を用いた場合と同様に、RXREとREの応答領域にEXR/PPARヘテロダイマーの結合が示唆れた。以上のin viro系でも脂肪酸がPPARを活性化しRXR-PPARヘテロダイマーのDNA応答領域への結合量増大を介したCRBP (II)遺伝子発現の促進が示唆された。 3.ラットの小腸絨毛上のレシチン:レチノールアシル転移酵素(LRAT)活性の分布を明らかにした:小腸絨毛にはCRBP (II)がその中央部から先端にかけての局在を、絨毛を連続凍結切片に分画して各画分のCRBP (II)をELISAにより定量し明らかにした。このCRBP (II)の分布と一致したレチノールエステル化酵素のLRAT活性の分布の証明を試みた。空腸絨毛を連続凍結切片に分画しレチノール-CRBP (II)複合体を基質にLRAT活性を測定した。LRAT活性は小腸絨毛の基部では非常に低いが、そこから中央部にかけて増大する活性のピークが形成され、中央部から先端にかけ活性は減少した。このLRAT活性の絨毛上分布のパターンはCRBP (II)タンパク質やCRBP (II) mRNAの分布パターンとほぼ一致していた。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Takase, S. et al.: "Lack of lecithin : retinol acyltransferase activity in chick lungs" Journal of Nutritional Sciences and Vitaminology. 42. 267-275 (1996)
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[Publications] 高瀬幸子、合田敏尚: "小腸における細胞性レチノール結合タンパク質type IIの生理的役割及びその遺伝子発現調節" ビタミン. 71(印刷中). (1997)
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[Publications] 高瀬幸子: "消化管の分子栄養学-栄養素の消化吸収に伴う小腸遺伝子発現調節" 栄養-評価と治療. 13. 297-303 (1996)