1995 Fiscal Year Annual Research Report
自然発症てんかんラット海馬錐体細胞異常電流発生機構のパッチクラインプ法による解明
Project/Area Number |
07670108
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
石原 熊寿 広島大学, 医学部, 講師 (20212912)
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Keywords | 自然発症てんかんラット / 海馬 / CA3 / カルシウムチャネル / 急性単離神経細胞 / パッチクランプ / ニカルジピン |
Research Abstract |
てんかん薬の開発のための有用なモデル動物と考えられる自然発症てんかんラット(SER)において、海馬切片を用いた研究で明らかになっているニューロンの異常興奮性についてカルシウムチャンネルの関与を検討した。 1.海馬切片を用いた細胞内記録法による検討(1)苔状線維を刺激したときに誘発されるCA3野ニューロンの脱分極シフトと繰り返し発火はL型カルシウムチャネル阻害薬であるジヒドロピリジン系薬物のニカルジピンにより抑制された。(2)ナトリウム及びカリウムチャネル阻害下に記録しているCA3ニューロンに脱分極パルスを細胞内通電したときSERのほうが正常Wistarラットよりも持続の長居カルシウムスパイクが誘発された。(3)SER及びWistarラットのカルシウムスパイクに対してニカルジピンは抑制作用を示したが、SERのカルシウムスパイクの方が感受性が高かった。 2.急性単離細胞を用いた実験(1)急性単離したCA3野ニューロンはSER、Wistarラットともにホールセルパッチクランプ法に用いることが可能であった。(2)ナトリウム及びカリウム電流を阻害し、電圧固定下にて脱分極パルスを細胞内に与えるとによりカルシウム電流を誘発した。SERのカルシウム電流の方がWistarラットのそれよりも小さい脱分極電位で流れはじめ、脱分極パルスをかけている間の不活性化の程度は少なかった。(3)ニカルジピンはSERのカルシウム電流をほぼ完全に抑制したが、Wistarラットのカルシウム電流に対しては約50%程度の抑制が観察されただけであった。 以上の結果からSERの海馬CA3野ニューロンにおいて観察される異常な脱分極シフトはニューロンのカルシウムチャネルのうち特にL型のカルシウムチャネルの活性化閾値の低下とその不活性化の抑制が関与することとニューロンに存在するカルシウムチャネルのうちニカルジピン感受性のチャネルの相対的な割合が増加していることが示された。これらのことからてんかん発作におけるカルシウムチャネルの異常の関与とてんかん発作に対するカルシウムチャネル阻害薬の治療薬としての可能性が示唆された。
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