1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07670141
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Research Institution | SHINSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
原 厚 信州大学, 医学部・附属加齢適応研究センター, 講師 (70126697)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上村 敬一 信州大学, 医学部・附属加齢適応研究センター, 助教授 (80012756)
武富 保 信州大学, 医学部・附属加齢適応研究センター, 教授 (30020704)
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Keywords | sulfdtide / anticodgulant / fibrinogen / Prothrombin time / thrombin / bleeding time / Pldtelet |
Research Abstract |
スフィンゴ糖脂質は通常、細胞表面に存在しており、細胞外からの刺激や情報の受容体として、細胞のマーカーとして、また、細胞の分化などに関与するなど、その重要性が明らかにされつつある。このスフィンゴ糖脂質は少量ではあるが血清リポタンパク質の本質的な構成成分となっていることを我々は明らかにした。ヒトの家族性高コレステロール血症の動物モデルであるWHHL rabbitにおいて、我々は、動脈硬化症の発症に伴い、このスフィンゴ脂質の一種であるスルファチドが顕著な増加を示すことを観察し、動脈硬化症においてスルファチドが重要な生理作用を演じていることを推定した。スルファチドを投与したウサギでは出血時間が異常に長いことから、動脈硬化症の末期に起こる血栓症に影響を及ぼす可能性を考えた。血栓形成を生じさせる二つの重要な因子は、血液凝固系の昴進と血小板の接着凝集の昴進である。このうち血液凝固系についてはスルファチドは著明な阻害効果を示し、血栓形成を阻止する方向に働くことを明らかにした。従って、動脈硬化症でのスルファチドの増加現象は、血栓をできにくくする生体の防御機構である可能性が示唆された。血栓形成のもう一つの因子は血小板の活性化及びその凝集である。新鮮な血小板浮遊液に充分量のスルファチドを加えると、血小板の凝集を完全に阻害できることを明らかにした。このことは、スルファチドの増加は血栓をできにくくするような生体の防御機構であるという我々の仮説を支持するものである。一方、血小板の凝集阻害効果がなくなるような低濃度において血小板の凝集を昂進させる事実が得られた。スルファチドの濃度によって相反する作用を示すことは、動脈硬化症の病態において、スルファチドは複雑に関与することが考えられ、また、血栓形成阻害剤として使用する場合、スルファチドの血中濃度のコントロールが重要であることが明らかとなった。血小板の凝集に関するスルファチドの効果については今後、より詳細な研究が必要である。
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