HTLV-I感染者体内のウイルス遺伝子陽性細胞に関する研究

1996 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 07670225
• Research Institution: CHIBA CANCER CENTER RESEARCH INSTITUTE
• Principal Investigator: 丸山 孝士 千葉県がんセンター, 病理研究部, 部長 (40260244)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 望月 重信 千葉県がんセンター, 病理研究部, 主任研究員 (60260246) ; 宮内 基博 千葉県がんセンター, 病理研究部, 主任研究員 (70260247)
• Keywords: HTLV-I / 人体腫瘍発生 / SCE / 染色体不安定性 / EBV / HRES-1 / 遺伝子脱分化 / 遺伝子産物異常発現

Research Abstract

前年度にはATL患者家族のHTLV-I遺伝子をPCR-SSCP法により調べ、抗HTLV-I抗体陰性者では陽性者に比べHTLV-I遺伝子変異が著しいことを明らかにした。また、胚細胞腫および鼻咽頭癌組織にHTLV-I-LTR遺伝子が高頻度検出されることを明らかにした。平成8年度は、18例の鼻咽頭癌組織についてHTLV-I-gag、及び、tax遺伝子の有無をPCR-SSCP法により検討した。gag遺伝子は18例中6例(33.3%)に、tax遺伝子は17例中8例(47.1%)に検出された。次に、異なる臓器の腫瘍組織111例についてHTLV-I-LTR遺伝子の有無をPCR-SSCP法により検索した。LTR遺伝子陽性例は、乳腺腫瘍で4/4(100%)、泌尿性器腫瘍で8/9(88.9%)、骨軟部腫瘍で22/25(88.0%)、内分泌腫瘍で7/8(83.3%)、呼吸器腫瘍で10/12(83.3%)、造血器腫瘍で26/34(76.5%)、皮膚腫瘍で3/4(75.0%)、神経腫瘍で4/9(44.4%)、消化器腫瘍で2/6(33.3%)であった。多型性を示す変異陽性LTR遺伝子が多くの例に認められた。しかし、Direct sequence法においてHTLV-I関連内在性レトロウイルスとして知られているHRES-1との相同性はなかった。胚細胞腫瘍患者8名について非腫瘍胚細胞組織2例および非胚細胞非腫瘍組織6例のDNAを検索した結果、全例に腫瘍組織とほぼ相同なLTR遺伝子が検出された。ATL患者5名とキャリア6名の末血または血清DNAのHTLV-I遺伝子多型の経時的変化を検討した。ATL患者5名中3名とキャリア6名全員にHTLV-I遺伝子多型の経時的変動が認められた。抗体陽性キャリア7名と陰性キャリア8名のリンパ球を短期培養しMNNG処理後SCEの検索を行った。その結果、LTR、gag、taxを全てもつ抗体陽性キャリア2名のリンパ球は抗体陰性キャリアのリンパ球に比べ有意に高いSCE値を示し、HTLV-I遺伝子陽性リンパ球の染色体不安定性が示唆された。免疫染色により遺伝子産物発現異常、及び、Direct sequence法により細胞周期関連遺伝子の変異がHTLV-I遺伝子陽性細胞に認められた。以上、HTLV-I遺伝子塩基配列がATL以外のヒト腫瘍にも存在することを明らかにした。その塩基配列には宿主細胞の由来組織による変化、また、同一個体において経時的変化が観察された。HTLV-I遺伝子は宿主細胞DNAの不安定性に関与していると推定される。

Research Products

• [Publications] K.Maruyama et al: "HUMAN RETROVIRUS RELATED SEQUENCES IN HUMAN SEMINOMAS." Journal of Investigative Medicine. 44(3). 198a- (1996)
• [Publications] T.Fukushima et al: "COMPARISON OF HTLV-I RELATED SEQUENCES IN DNA OF ADULT T CELL LEUKEMIA PATIENTS AND THEIR FAMILY MEMBERS." Journal of Investigative Medicine. 44(3). 198a- (1996)
• [Publications] 宮内基博他: "HTLV-I感染精上皮腫のウイルス遺伝子変異におよぼす内在性レトロウイルス遺伝子の関与" 日本癌学会総会記事. 55. 292- (1996)
• [Publications] 丸山孝士他: "鼻咽頭癌におけるEBVおよびHTLV-I遺伝子と遺伝子産物発現異常" 日本癌学会総会記事. 55. 293- (1996)
• [Publications] K.Maruyama et al: "GENETIC ABNORMALITIES OF NASOPHARYNGEAL CARCINOMAS DUALLY INFECTED WITH EPSTEIN-BARR VIRUS AND HUMAN T LYMPHOTROPIC VIRUS TYPE I." Cancer Detection and Prevention. 20(5). 463- (1996)
• [Publications] N.Koshikawa et al: "SISTER CHROMATID EXCHANGE ANALYSIS OF HUMAN CELLS CARRYING RETROVIRAL DNA." Cancer Genetics and Cytogenetics. (In Press). (1997)