1995 Fiscal Year Annual Research Report
マダニの吸血に伴うライム病ボレリアの宿主転換(病原体の伝播経路の解明)
Project/Area Number |
07670269
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
中尾 稔 旭川医科大学, 医学部, 助手 (70155670)
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Keywords | ライム病ボレリア / マダニ / 宿主転換 / 微細形態学 |
Research Abstract |
ライム病はボレリア属スピロヘータによる感染症である。この細菌はマダニと脊椎動物との間で宿主転換しなければ、その生活環を維持できない。宿主転換はマダニの吸血時に“マダニから脊椎動物へ"、“脊椎動物からマダニへ"というルートで行われる。この際、ボレリアは全く異なる環境に瞬時に適応する。本研究ではふたつの宿主におけるボレリアの存在様式に着目し、電子顕微鏡による形態学的調査を行い、病原体の移行経路について、その全体像を把握することを目的とした。平成7年度は、脊椎動物の体内、特に皮膚におけるボレリアの存在様式を観察した。しかし、感染マウスの皮膚では、ボレリアの分布密度が低いようで、確実にボレリアの存在部位を同定できていない。ただし、ボレリア増殖培地に入れた皮膚を観察したところ、真皮結合組織のコラーゲン繊維に絡まるようにして存在するボレリアを多数確認した。また、皮膚でのボレリア密度を推定するため、PCR法で皮膚からボレリアDNAを検出する方法も開発した。ボレリアの鞭毛遺伝子をシーケンスしてボレリア種に保存的な領域のプライマーを合成し、Nested PCRを行ったところ、感染マウスの皮膚から鞭毛遺伝子を検出することができた。この増幅産物を制限酵素で処理したところ、感染しているボレリア種を同定することも可能で、臨床診断への応用が強く示唆された。平成8年度はマダニにおけるボレリアの存在部位を確認する予定であるが、この予備実験として少数例の未吸血マダニの中腸を観察している。マダニではボレリアの分布密度が高いようで、中腸のmicrovilliに接して存在するボレリアを確認している。今後、マダニの吸血時におけるボレリアの動態を観察し、“マダニから脊椎動物へ"の移行経路を解明する予定である。
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