1996 Fiscal Year Annual Research Report
ネズミチフス症とサイトカイン-ノックアウトマウスを用いた解析
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07670321
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Research Institution | KITASATO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
熊沢 義雄 北里大学, 理学部, 教授 (30072375)
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Keywords | S.typhimurium / 内毒素(LPS) / NKT細胞 / マクロファージ / サイトカイン / IFNγ / IL-4 / IL-12 |
Research Abstract |
グラム陰性菌のSalmonella typhimurium(Stm)感染によって起こるネズミチフス症はヒトの腸チフスと類似した症状を呈する。Stmはマクロファージ内で増殖する細胞内寄生細菌であり、抵抗性獲得は細胞性免疫の主役であるIFNγ産生性のヘルパーT細胞(Th1)の活性化による。Stm感染によるTh1の活性化とStmの内毒素(LPS)に対する応答により種々のサイトカインが産性され、それらが防御機構の制御に多大な影響を与えている。近年肝臓リンパ球集団しには、通常Th2型のIL-4産生性NK1^+CD4^+TCRαβintermediateT(NKT)細胞が存在し、BCGやリステリア感染に伴い消失することが報告されている。Stm感染におけるIL-4産生性NKT細胞の関与を明らかにするため、C57BL/10ScSn(B10Sn,Lps^n)とLPS不応答性C57BL/10ScCr(B10Cr,Lps^d)マウスを用い、ワクチン株のStmaroAを1.5x10^6cfuを腹腔内に感染させた。経時的に肝臓内のIL-4産生性NKT細胞をフローサイトメトリーで解析した。B10Snマウスでは感染4日目にはこの細胞が殆ど消失していたが、B10Crではその消失が遅延した。これはTh1型のIFNγ産生性NKT細胞にシフトしたことを示唆している。肝臓ではaroAの持続感染と長期間のIL-4産生性NKT細胞の消失を認めた。IFNβ産生能が低いB10Crマウスに組換マウスIFNβを投与したが、IL-4産生性NKT細胞の消失は促進されなかった。リステリア感染でもB10CrマウスでのNKT細胞の消失の遅延と肝臓局所でIL-12産生が低いことを認めたので、この現象にLPSが関与しないことが示唆された。Stm感染に対する抵抗性はChr.1に存在するIty遺伝子によっても支配されている。そこで、遺伝的背景をBALB/cマウスに統一し、IFNγ(Th1)とIL-4(Th2)遺伝子ノックアウトマウスおよびLPS不応答性マウス(BALB/1ps^d)を用いて、NKT細胞を含むCD11a^+/CD44^+CD4^+TCRαβintermediateT細胞の変動について調べた。感染に伴いNKT様細胞は約半分に減少し、B10系と同じ現象を認めた。感染抵抗性ではIFNγ^<-/->が最も弱く、BALB/1ps^dの順であり、BALB/cとIL-4^<-/->マウスは同程度であった。常在性マクロファージの殺菌能も同じ結果であった。Stm感染腹腔滲出細胞をin vitroでLPS刺激すると著しいTNFα産生を認めたが、IFNγ^<-/->が最も弱いTNFα産生能を示した。なお、BALB/Ips^dはLPSには応答しなかった。Stm感染におけるLPSに対する応答性、Th2からTh1へのシフト、IFNγによるマクロファージ活性化がStm感染に対する抵抗性獲得に重要であることを本研究で明らかにした。
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