1995 Fiscal Year Annual Research Report
Helicobacter pylori感染による胃粘膜障害発現機構の解明
Project/Area Number |
07670322
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
神谷 茂 杏林大学, 医学部, 教授 (10177587)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大崎 敬子 杏林大学, 医学部, 助手 (90255406)
山口 博之 杏林大学, 医学部, 助手 (40221650)
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Keywords | H. pylori / 慢性胃炎 / 消化性潰瘍 / 付着性 / サイトトキシン / サイトカイン / 熱ショック蛋白 |
Research Abstract |
Helicobacter pylori感染のもたらす胃粘膜障害機構の解明を目的とした本研究より以下のような実験結果が明らかにされた。 H. pyloriの胃粘膜への付着は本菌による胃内持続感染の最初のステップとして重要である。H. pyloriの培養細胞に対する付着性をフローサイトメトリーにより解析した。本菌は小腸由来細胞よりも胃上皮細胞に強い親和性をもち付着した(Osaki et al, 1995)。また本菌の付着性は空胞化毒素(Vacuolating toxin: VT)産生性とは相関しないがヒト0型赤血球に対する赤血球凝集活性と相関することも明らかにされた。 VTを産生する有毒株H. pyloriの培養上清はモルモット胃壁細胞の酸分泌能を抑制した(Kobayashi et al,1996)。一方、VTを産生しない無毒株の培養上清にはこのような抑制効果は認められなかった。有毒株培養上清添加後の壁細胞におけるcyclic-AMPおよびCa^<2+>濃度は対照と比べ差異は認められなかった。これらの結果はVTによる酸分泌抑制は細胞内2nd messengerの反応性によるものではなく、直接プロトンポンプに作用するためであることが示唆された。 H. pylori分離株は胃癌上皮(MKN45)細胞に付着後、IL-8産生を誘導した。有毒株の誘導するIL-8は1120±312pg/mlであったのに対し、無毒株のそれは208±106pg/mlであった。この結果は菌体表面に発現したVTがIL-8産生の強いinducerとなる可能性を示唆するが、有毒株培養上清のみではIL-8産生は誘導されなかった。 H. pyloriの産生する熱ショック蛋白(heat shock protein:HSP)が胃十二指腸疾患に関与する可能性を検討した。被検15株のH. pyloriは全て60kDaのHSP60を同程度産生していることがイムノブロット法で明らかにされた(Yamaguchi et al, 1996)。一方,HSP60の菌体表面上での発現をフローサイトメトリーにより解析した結果,菌株間や培養条件により異なることが確認された(Yamaguchi et al, 1996)。また胃癌由来培養細胞や生検材料中のヒト胃上皮細胞表面にはHSP60と交叉反応性を示す蛋白抗原の存在が確認され,HSP60が本菌感染による慢性炎症のトリガーとなる可能性も示された。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Yamamoto-Osaki T et al.: "Adherence of Helicobacter pylori to cultured human gastric carcinoma cells." Eur. J. Gastroenterol. Hepatol.7(Suppl 1). 89-92 (1995)
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[Publications] 神谷 茂 他: "Helicobacter pyloriの細胞空胞化毒素産生に及ぼすソファルコンの効果" Progress in Medicine. 15(11). 2383-2388 (1995)
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[Publications] 大崎敬子 他: "臨床検体からのHelicobacter pylori培養について" Progress in Medicine. 15(12). 2668-2672 (1995)
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[Publications] Yamaguchi H et al.: "Induction and epitope analysis of heat shock protein of Helicobacter pylori" J. Gastroenterol.(inpress). (1996)
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[Publications] Yamaguchi H et al.: "Flowcytometric analysis of the heat shock protein 60 expressed on the cell surface of Helicobacter pylori" J. Med. Microbiol. (inpress). (1996)
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[Publications] Kobayashi H et al.: "The effect of Helicobacter pylori on gastric acid secretion by isolated parietal cells from a guinea pig." Scand. J. Gastroenterol.(inpress). (1996)
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[Publications] 神谷 茂: "ヘリコバクター・ピロリ 最新知見からの報告" 医薬ジャーナル社(印刷中), (1996)