1997 Fiscal Year Annual Research Report
SIDSの小脳・脳幹部における病理組織ならびに組織計量的研究
Project/Area Number |
07670504
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Research Institution | KITASATO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
古川 理孝 北里大学, 医学部, 講師 (90051911)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 寛 北里大学, 医学部, 助手 (00184804)
中村 茂基 北里大学, 医学部, 講師 (70130268)
杉江 秀明 北里大学, 医学部, 講師 (00050691)
栗原 克由 北里大学, 医学部, 教授 (90138123)
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Keywords | SIDS / 後頭蓋窩容積 / 三次元画像解析 / 小脳 / 橋 / 延髄 / 脳浮腫 |
Research Abstract |
本年度(本補助金の最終年度)はさらに新たな症例を加え、SIDS群20例(生後1カ月〜11カ月)、対照群13例(生後2カ月〜3才)について後頭蓋窩の骨容積、小脳・橋・延髄の脳体積および組織所見等について画像解析による検討を行なった。特に骨容積は脳摘出後の後頭蓋窩容積(A)と大後頭孔周辺部容積(B)、脳体積は小脳・橋・延髄全体の体積(a)と延髄の体積(b)をそれぞれ三次元画像解析ソフトOZにて計測した。 その結果、骨容積はSIDS群でAが30.0〜107.0cm^3、Bが1.1〜5.7cm^3、対照群ではAが45.0〜170.0cm^3、Bが2.0〜7.2cm^3、脳体積はSIDS群でaが30.0〜103.0cm^3、bが0.4〜0.8cm^3、対照群ではaが45.0〜168.0cm^3、bが0.9〜1.5cm^3であった。児の月/年齢増加に伴い、いずれの値も著名な増加傾向が認められた。次にSIDS群と対照群を同一月齢(2〜11カ月)で比較した。この場合の平均月齢はSIDS群が5.7カ月(12例)、対照群は6.4カ月(8例)である。その結果を平均値で示すと、骨容積はSIDS群でAが73.6cm^3、Bが3.4cm^3、対照群ではAが96.8cm^3、Bが3.3cm^3、脳体積はSIDS群でaが71.0cm^3、bが0.7cm^3、対照群ではaが92.5cm^3、bが1.0cm^3であった。以上よりB以外の容/体積はSIDS群の方が対照群より小さい傾向を示しており、またBについては容積比(B/A)を算出すると、SIDS群(4.6%)の方が対照群(3.3%)より大であった。すなわち延髄を囲む大後頭孔周辺部のスペースはSIDS群の方がより大きく、したがってBに小脳扁桃の陥入が起こりやすいのではないかと思われた。また組織学的にはSIDSにおける脳の未熟性だけでなく、脳浮腫の存在(血管周囲腔の拡張や基質の鬆粗化程度)も示唆された。この脳浮腫は小脳扁桃の陥入によって生ずる髄液の灌流障害と頭蓋内圧の上昇に起因し、SIDSの死亡原因を考察する上で極めて有用な所見と思われた。
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