1996 Fiscal Year Annual Research Report
主要臓器における死後変化の組織学的検討ならびに死因との関連
Project/Area Number |
07670506
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
富田 ゆかり 日本医科大学, 医学部, 助手 (20159049)
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Keywords | 死後変化 / 組織学的検討 / 電子顕微鏡 / 核クロマチン凝集 / ミトコンドリア膨化変性 / ラット |
Research Abstract |
組織学的検索は法医実務上重要な位置を占めているが,死後早期よりミトコンドリアの膨化変性あるいは核クロンマチンの凝集等の形態変化が生じることも知られている。今年度は死後早期の組織学的変化を超微形態学的に明らかにする目的で,ラットを頚椎脱臼にて屠殺後室温放置24時間までの腎臓・肝臓・膵臓・心臓・骨格筋における変化を透過型電子顕微鏡を用いて経時的に観察した。 1.膵臓では1時間後にすでに小胞体の拡張が,10時間後にミトコンドリアの無構造化が見られた。 2.肝臓では10時間後にグリコーゲン顆粒の減少,小胞体の拡張,ミトコンドリアの無構造化が見られた。 3.腎臓では近位尿細管で3時間後に微絨毛の乱れとミトコンドリアの膨化,5時間以後に核クロマチンの凝集が見られ,24時間後にミトコンドリア内に高電子密度の無構造沈殿物が出現した。一方遠位尿細管では1〜3時間後に細胞質の浮腫,3時間後に核クロマチンの凝集,5時間後にアポトーシス様変化を生じた核と壊死性変化を生じた核の混在が見られ,10時間後にミトコンドリア内に高電子密度の無構造沈殿物が出現した。 4.心筋ではl-bandが3時間後に出現した後10時間後には消失し,15時間後には再度出現した。また3時間後から経時的にグリコーゲン顆粒が減少して15時間後にはほとんど消失し,24時間後にはミトコンドリア内に高電子密度の無構造沈殿物が出現した。 5.骨格筋では他の臓器に比べ形態学的変化の出現時期は遅く,24時間後に核クロマチンの凝集,筋線維の腫脹,弛緩像が見られた。 6.以上のことから,超微形態学的変化の観察により死後早期の経過時間の推定が可能と考えられた。
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