1997 Fiscal Year Annual Research Report
主要臓器における死後変化の組織学的検討ならびに死因との関連
Project/Area Number |
07670506
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
富田 ゆかり 日本医科大学, 医学部, 助手 (20159049)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 茂 日本医科大学, 医学部, 助手 (10125073)
仁平 信 日本医科大学, 医学部, 助教授 (40089636)
大野 曜吉 日本医科大学, 医学部, 教授 (70152220)
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Keywords | 死後変化 / 組織学的検討 / 超微形態学 / ラット / 失血死 / 核クロマチン凝集 / ミトコンドリア膨化変性 / 透過型電子顕微鏡 |
Research Abstract |
組織学的検索は法医実務上重要な位置を占めているが,その一方で死後早期よりミトコンドリアの膨化変性あるいは核クロマチンの凝集等の形態変化が生じることも知られている。今年度はラットを用い,エーテル麻酔下で右頸動脈を切断して数分以内に失血死させ,23℃の環境に屍体を放置して死亡直後から24時間後までの腎臓・肝臓・膵臓・心臓・骨格筋の各組織における経時的変化を透過型電子顕微鏡を用いて観察し,昨年度検討した頸椎脱臼死での変化と比較した。 1.膵臓ではミトコンドリア内の高電子密度無構造物は3時間後には殆ど見られず,10時間後にも一部のミトコンドリア内に見られるのみで,頸椎脱臼に比べ死後変化が緩慢であった。2.肝臓では10時間後にはミトコンドリアの無構造化が見られた。3.腎臓では近位尿細管で死後直後から尿細管管腔内にショックに起因するapical blebが見られ,この所見は24時間後にも明瞭であった。ミトコンドリア内の高電子密度の無構造物は10時間後まで殆ど見られなかったが,15時間後には明瞭となった。一方遠位尿細管では10時間後にはアポトーシス様変化を生じた核とミトコンドリア内高電子密度の無構造沈殿物が見られた。4.心筋では3時間後には収縮像が見られたが,10時間後には収縮像と弛緩像が混在しており,死後硬直の発現と消失は頸椎脱臼に比べ遅延する傾向であった。ミトコンドリア内高電子密度無構造沈殿物は24時間後には明瞭であった。5.骨格筋では他の臓器に比べ形態学的変化の出現時期は遅く,15時間後には核クロマチンの凝集と筋弛緩像が見られた。6.失血死では頸椎脱臼死に比べ直腸温降下が速く,このことが死後硬直および組織学的変化の出現時期を遅らせたものと考えられた。
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