Research Abstract |
Farnesyl transferase inhibitor(FTI)であるfarnesylamineを,新たに合成した. farnesylamineのfarnesy transferaseに対する阻害,cytotoxicity,アポトーシス誘導を膵癌細胞株とNIH3T3,k-ras transformed NIH3T3(K-R)で検討した. 【研究結果】 1)FarnesylamineはMTT assayにて用量依存性のcytotoxicicityを示し,IC50(μM)はPK-1,-8,-9,HPC-1,-3,-4で各々24,28,9,15,18,17であり、k-ras mutationを持つ膵癌細胞株では9-28μMのIC50を示した.しかし,NIH3T3では100μM以下ではcytotoxicityを示さなかった.また,NIH3T3のc-raf-1 transformantであるRAF細胞では42μM以下ではcytotoxicic resistantであった. 2)0.3,3,30μMのfarnesylamine濃度の48時間incubationにて,膵癌細胞株およびK-R細胞にてアガロース電気泳動によりラダー形成がみられ,アポトーシスが誘導された.しかし,NIH3T3にてはアポトーシス誘導は認めなかった. 3)Farnesylamineのfarnesyl transferaseに対する阻害作用を[3H]FPPを用い検討した.Farnesylamineのfarnesyl transferase activityの50%阻害濃度は約3μMであった. 4)Western blot法によりfarnesylamineのras-p21蛋白のposttranslational processingに対する検討をK-R細胞で行った,コントロールではmembrane associated ras-p21(m-p21)とunprocessed cytoplasmic ras-p21(c-p21)の2つのバンドをみるが,30μM濃度のfarnesylamine存在下では,m-p21のバンドは認めなかった. 以上より,新たに合成したfarnesylamineはk-ras mutationを有する膵癌細胞特異的にcytotoxicityを示し,それはアポトーシス誘導によること,およびfarnesylamineはras-p21のfarnesyl化を阻害していることが判明した.また,farnesylamineは膵癌細胞にcytotoxicityを示す濃度では,NIH3T3細胞に対しcytotoxicityを示さないことより,farnesylamineは癌細胞特異的な有効な化学療法剤としての可能性が示唆された.
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