1997 Fiscal Year Annual Research Report
アルコール性肝障害の線維化に関する分子生物学的研究
Project/Area Number |
07670624
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Research Institution | Tokyo Women's Medical College |
Principal Investigator |
土谷 まり子 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (00266826)
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Keywords | アルコール性肝障害 / 肝硬変 / nitric oxide / nitric oxide synthase / heme oxygenase |
Research Abstract |
慢性肝障害時には、肝実質の減少、細胞機能の低下による病態のみでなく、様々な生理活性物質、血管作動物質の関与が指摘されている。本年度は、臨床上、肝障害時に見られる血清ビリルビン、ヘモグロビン値の変化が病体生理的にいかなる意義を持つかを検討した。 胆管結紮による高ビリルビン血症では血清および尿中のnitric oxide(NO)の上昇をもたらしたが、heme oxygenase(HO)のmRNAの各臓器の発現には有意な影響を与えなかった。HOの特異的な阻害剤であるZinc protoporphyrinを用いても、昇圧作用は顕著でなく、認められた腎機能の低下や低血圧は、主としてNO系の作用に基づくものと考えられた。この高ビリルビン血症は2週間負荷による急性期のものなので、今後はより長期に負荷した状態での病態も検討する予定である。 一方、ヘモグロビンはhemeの前駆物質であり、その負荷によりHO誘導作用があることが推測されている。今回、erythrocytosis作用のある合成erythropoietinを慢性投与することにより多血症モデルを作製した。多血症状態では、肝、腎においてHO-I mRNAが誘導されていた。Zinc protoporphyrinによりHOを阻害すると、著明な昇圧効果、尿量の減少、血中、尿中Noxの上昇が認められた。多血症時には、HOは降圧作用に働いており、腎機能の保持機能にも関与していると考えられた。NO系に関しては、HOの活性とむしろ相反する方向に変化が認められ、HOおよびNOSは拮抗的な動きを示す可能性が示唆された。こうした一連の変化はerythropoietin自体の作用ではなくヘモグロビンにより誘導されることが、ヘモグロビンの直接負荷により証明された。 肝障害に伴う代謝物質が連鎖的に他の活性物質の動態に影響をあたえ病態生理を成立させている一連の変化が観察された。
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