1996 Fiscal Year Annual Research Report
急性肺損傷の発症における肺および肝臓内単核球系貧食細胞の関与
Project/Area Number |
07670678
|
Research Institution | Keio University, School of Medicine |
Principal Investigator |
石坂 彰敏 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (90176181)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒瀬 巌 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (50234604)
金沢 実 慶應義塾大学, 医学部, 専任講師 (80118934)
|
Keywords | 急性肺損傷 / エンドトキシン / 単核球系貧食細胞 / 細網内皮系 / 2クロルアデノシン / ラテックス粒子 |
Research Abstract |
今回我々はグラム陰性桿菌による急性肺損傷(ARDS)の発症病態における単核球系貧食細胞の関与を検討し、発症予防・治療上の基礎的知見を得ることを目的とした。単核球系貧食細胞の機能を抑制するとされる2クロルアデノシン(2CA)を投与したモルモットを用いて急性肺損傷を検討した。実験の6日前にサイクロホスファミドを腹腔内投与し、抹梢血好中球を減少させた。単核球系貧食細胞を活性化させるためにラテックス粒子を、また単核球系貧食細胞の機能を抑制するために2CAを用いた。損傷刺激としてはエンドトキシン0.2mg/kgを用い、投与後4時間観察した。肺損傷は肺組織湿乾重量比、放射性ヨードの標識アルブミンの肺組織・血漿計数比を用いた。結果としてエンドトキシンのみを投与した群では有意な肺損傷は見られず、好中球がARDSの発症に関与していることが示唆された。しかしラテックス粒子を静脈内投与して単核球系貧食細胞を活性化した群では急性肺損傷が発生し、またラテックス粒子に加えて2CAを静脈内投与した群ではエンドトキシン投与後の急性肺損傷が抑制された。これらの成績から好中球減少状態であっても単核球系貧食細胞が活性化していれば急性肺損傷が惹起されることが示された。次に2CAを気管内投与した後にエンドトキシンを静脈内投与したところ肺損傷は抑制されなかった。また気管支肺胞洗浄により採取した肺胞マクロファージで、トリパンブルー染色により細胞の生存率を評価した。その結果2CAを気道内投与した群では肺胞マクロファージの生存率が低下した。すなわち2CAを気道内投与すると肺胞マクロファージの活性が低下するにもかかわらず肺損傷は抑制されなかった。好中球減少状態におけるエンドトキシンの静脈内投与による急性肺損傷の発生には単核球系貧食細胞、とくに細網内皮系や抹梢血の単球の関与が重要であると考えた。
|
-
[Publications] Ishizaka,A.,et al.: "Augmentation of endotoxin-induced pulmonary responses by mono-nuclear cell phagocytosis in the reticuloendothelial system." Critical Care Medicine. 24(6). 1034-1040 (1996)
-
[Publications] 田坂定智、他.: "加熱死菌前処置モルモットの急性肺損傷の発症における炎症細胞の役割" 日本胸部疾患学会雑誌. 34(8). 864-869 (1996)
-
[Publications] 石坂彰敏、他.: "エンドトキシン急性肺損傷における2クロロアデノシン静脈内投与の作用" 日本胸部疾患学会雑誌. 34(6). 665-670 (1996)