Research Abstract |
新生児,早期乳児におけるRSウイルス(RSV)感染の病態の解明のために,平成7年度の研究において,臍帯血より得た単球を数日間培養することでマクロファージ化したもの(Monocyte-deribed macrophage:MDM)に,RSVを感染させる系を確立したが,平成8年度は,その系を用いRSV感染の際に誘導される種々サイトカインについてmRNAと,サイトカイン蛋白両方の面から検討した.また,健康成人末梢血単球を同様に用い,臍帯血単球と比較した.培養上清中に分泌されるIL-6,TNF-α活性をELISA法で測定した.また,それらmRNAの発現を細胞よりRNAを抽出した後,RT-PCRを用いて検索した.新生児MDMはウイルス感染刺激により,成人MDMと同様に,感染24時間以内に良好に両サイトカインを産生することが示されたが,IL-6の誘導については両者で2,3の違いが見られた.つまり,新生児MDMにおける産生は,感染24時間以内にほとんど終了し,また不活性ウイルスによってはほとんど誘導されないが,成人MDMにおいては,生ウイルス感染による産生は24時間以降も続き,また,不活化ウイルスによっても生ウイルスの半分程のIL-6産生がなされた.これらIL-6活性の消長は,mRNAの消長と概ね一致しており,これらはmRNAのレベルで規定されていると考えられた.一方,培養上清中のウイルス価の検討より,新生児MDMにおいては,成人MDMより,RSV感染が早く進み,早期に終了することが示されたが,それが,IL-6の産生が早期に終了する事と関連していると考えられた.不活化RSVに対するIL-6の産生が低いことは貧食能とそれに続くサイトカイン誘導の能力が劣っていることを示すと考えられた.これらの事は新生児期のマクロファージの脆弱性や未熟性に起因するものと考えられるが、幼弱乳児においてRSVに対する免疫反応が弱く不完全であることと関係があるかも知れない.
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