1995 Fiscal Year Annual Research Report
がんの放射線・抗がん剤治療による末梢血リンパ球の突然変異誘発とDNA塩基配列変化
Project/Area Number |
07670992
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
木村 博 滋賀医科大学, 医学部, 助教授 (00110560)
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Keywords | 培養細胞突然変異 / DNA塩基配列変化 / インビボ突然変異 / hprt遺伝子 / 放射線治療 / 抗がん剤治療 / マルチプレックスPCR / RT-PCR |
Research Abstract |
本課題の本年度の目的はCHO細胞を用いて、抗がん剤によりヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(hprt)遺伝子に起こる突然変異を、DNA塩基配列のレベルで調べることである。抗がん剤としてはネオカルチノスタチン(NCS)を選んだ。また、比較のために自然誘発突然変異についても調べた。突然変異体は6チオグアニン(6TG)耐性として、それぞれについて、すでに50以上のクローンを得ている。個々のクローンのhprt遺伝子の解析は、まず大きな欠失をマルチプレックスPCR法によって検出した。この方法で変化の検出できなかった小さな変化は、RT-PCR法を用い、c-hprtの配列を決定することで、塩基レベルの変化としてとらえた。現在、DNA塩基配列決定が終わっているものは、自然突然変異で27クローン、NCS誘導変異で21クローンある。それらをみると、塩基置換変異はNCS誘導変異に多くみられ、小さな欠失、フレームシフト変異は自然突然変異に多かった。この違いはそんなに大きなものではなく、おそらくNCSによって塩基置換変異が増えることによるものであろう。一方、それぞれの塩基置換について詳しく調べると、NCS誘発変異に特徴的な変化がみられた。変異した塩基の両隣にA:Tが高頻度にみられるのである。NCSはDNA2本鎖に入り込むことでT残基に切断を入れることが知られている。NCS誘発変異にみられる特徴は、おそらく、この傷のできかたによっているのかもしれない。もう少し解析数を増やすために数カ月が必要であるが、一応、本年度の目的は達成されたと考えている。次年度はいよいよ動物を用いて実験を行う予定であるが、マウスを用いたリンパ球の突然変異系は、その確立が容易ではないので、系がうまく機能しているかどうかを調べるためにも、まず、ベンツピレンなどの特異的なDNA変化を起こす物質で行う必要があるかもしれない。
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