1996 Fiscal Year Annual Research Report
全盲者の生体リズム障害に対するビタミンB_<12>の有効性について
Project/Area Number |
07671058
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Research Institution | Fukui medical school |
Principal Investigator |
中川 博幾 福井医科大学, 医学部, 助教授 (10198038)
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Keywords | 全盲者 / 睡眠覚醒障害 / サーカディアンリズム / ビタミンB_<12> / メラトニン / 睡眠障害 |
Research Abstract |
全盲者の睡眠覚醒状態を調べるために、同一施設に入所中である全盲者84名と、全盲でない視覚障害者132名に対して、睡眠状態をアンケートで調査した。その結果、両群における睡眠覚醒スケジュール障害の疑いがある者の頻度には、差は認められなかった。その原因として、ヒトの場合、睡眠、覚醒リズムは光よりも社会的同調因子に強く影響を受けている可能性が強く、両群とも同一施設に入所しているため、同じ社会的同調因子の影響を受けていたためと考えられた。しかし、全盲者のほうが入眠時間が長く、起床時間が遅かった。このことは、全盲者は自覚的訴えはなくても、睡眠の質、量などが悪いことを意味していると思われた。 上記の調査で、不規則な睡眠覚醒パターンと診断された全盲者(34歳女性)に対して、ビタミンB_<12>を投与し、その前後の一日の総睡眠時間、一日の睡眠・覚醒回数、一日の最長の睡眠時間の入眠時刻を調査した。その結果、ビタミンB_<12>を投与により有意な睡眠時間の延長、睡眠、覚醒回数の減少、入眠時間の後退が認められ、睡眠・覚醒パターンが明らかに改善した。さらに、投与前後に測定したメラトニンリズムは、ビタミンB_<12>投与前には一日中10pg/ml以下で平坦あったが、投与後には夜間分泌量が増加し、やや周期性が出てきた。これらの結果より、上記の睡眠・覚醒パターンの明らかに改善には、睡眠・覚醒リズムを調節していると考えられているメラトニン分泌が、夜間増加したことが関与している可能性が示唆出来た。 ビタミンB_<12>を全盲者の睡眠覚醒スケジュール障害者に投与した。その結果、臨床症状は明らかに改善した。そして、その改善にはメラトニンが関与しているのではないかと思われた。
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