1997 Fiscal Year Annual Research Report
難治性うつ病に対する薬物治療ストラテージの分子薬理遺伝子学的研究
Project/Area Number |
07671064
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
染矢 俊幸 滋賀医科大学, 保健管理センター, 講師 (50187902)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下田 和孝 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (30196555)
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Keywords | 難治性うつ病 / 三環系抗うつ薬 / 代謝 / 遺伝子解析 |
Research Abstract |
本研究は、三環系抗うつ薬およびその代謝物血中濃度に関するデータ収集とその解析、これらの薬物代謝に関与する酵素の遺伝子レベルでの解析を行って、難治性うつ病の生物学的要因を探索し、新たな治療戦略を開発することを目的としている。ノルトリプチリン(NT)は代表的な抗うつ薬のひとつであるが、NTの水酸化にはCYP2D6が関与している。平成9年度はNTを投与中の患者31名におけるNTおよびその水酸化代謝物血漿中濃度とCYP2D6の変異遺伝子であるCYP2D6Chとの関係について検討した。NTの水酸化率(nortriptyline/trans-10hydroxynortriptyline)は0.398〜4.04と約10倍の個体差をみとめた。各遺伝子型の出現頻度は野生型(Wt)型=0.584、Ch型=0.339、L_1型=0.113であった。体重当たり投与量で補正した各個体の平均NT血漿中濃度はWt/Wt群 =267±128nM/mg/kgBW、Wt/Ch=326±61.1nM/mg/kgBW、Ch/Ch群 =488.6±103.8nM/mg/kgBW、Ch/L_1=221.8nM/mg/kgBW、Wt/L_1群 =260.3±81.7nM/mg/kgBWであり、Wt/Wt群と比較してCh/Ch群は約1.8倍高い値を示し、両群の間には有意差を認めた(p=0.0096)。NTの水酸化率の各群での平均値はWt/Wt群=0.89±0.29、Wt/Ch=1.11±0.30、Ch/Ch群=2.97±0.83、Ch/L_1=0.75、Wt/L_1群=1.05±0.31であり、Wt/Wt群と比較してCh/Ch群は約3.4倍高い値を示し、両群の間には有意差をみとめた(p=0.006)。このことからCYP2D6Chの存在がNTの水酸化を著明に低下させることがわかった。
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[Publications] 下田和孝ら: "選択的セロトニン取り込み阻害薬(SSRZ)の薬物交互作用について-SSRI時代の夜明け前〜-" 精神医学. 39(12). 1329-1336 (1997)
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[Publications] 染矢俊幸ら: "TDMはなぜ有用なのか" 臨床精神薬理. 1(1). 39-45 (1998)
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[Publications] 下田和孝ら: "抗うつ薬血中濃度モニタリングの現状と問題点" 臨床精神薬理. 1(4)(印刷中). (1998)