1996 Fiscal Year Annual Research Report
アポ蛋白E遺伝子によるアルツハイマー病の早期診断:特に初老期うつ状態との関係
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07671083
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Research Institution | Jichi Medical School Omiya Medical Center |
Principal Investigator |
井出 雅弘 自治医科大学, 医学部, 助手 (50271218)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大塚 美恵子 自治医科大学, 医学部, 講師 (30194210)
植木 彰 自治医科大学, 医学部, 助教授 (90112622)
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Keywords | 高齢者うつ状態 / アポリポ蛋白E / アルツハイマー病 / 無症候性脳梗塞 |
Research Abstract |
目的)アポ蛋白E(apoE)-ε4-alleleはアルツハイマー病(AD)の危険因子である.昨年度の報告で高齢者の精神障害のうちうつ型では不安神経症型,身体異常型などに比してapoE-ε4の遺伝子頻度が高く,うつ状態の一部はADの初期状態である可能性を報告した.一方,高齢者の無症候性脳梗塞ではうつ状態を呈する頻度が有意に高いとの報告もあり,高齢者のうつ状態は器質性脳疾患の表現型の可能性がある.本年度はうつ状態,神経症などを呈する高齢者のapoE遺伝子頻度,頭部MRI所見を比較し,うつ状態の持つ臨床的意義を検討する. 対象と方法)神経内科を受診した60歳以上の高齢者でうつ,身体不定愁訴を主訴とし神経所見を認めない患者20人.対照は精神神経症状を示さない60歳以上の一般内科受信者139人.精神症状はDSM-IVおよびICD-10に従いうつ型,不安神経症型,身体異常型などのサブグループに分類した.うつ状態はHamilton Self Rating Depression Scaleを用い10点以上を異常とした.知的機能は長谷川式簡易的機能評価スケールを用いた.頭部MRIではラクナ梗塞,深部白質病変など無症候性梗塞の有無を検討した.ApoE遺伝子型は等電点免疫泳動にて決定した. 結果)1)疾患分類ではうつ型(A群)が9例,不安神経症型(B群)が11例であった.うつ型の9例のうち3例(A2群)MRIで無症候性脳梗塞を認め,残り7例(A1群)のMRIは正常であった.2)対照のapoE遺伝子型はE4/3(19.4%),E3/3(77.0%),E3/2(2.9%),E2/2(0.7%)であった.A1群ではE4/3(50%),E3/3(50%)とE4保持者の比率が高かった.A2群では3例ともE3/3であった.B群ではE3/3(90.9%),E3/2(9.1%)であった. 考察)高齢者のうつ状態ではapoE-ε4の遺伝子頻度が高く,逆にADのうちapoE-ε4保持者ではうつを呈する頻度が高いと報告されていることより,ADとうつ状態とapoE-ε4の3者の関連がより強くなったと考える.一方,うつ状態では無症候性脳血管障害を認める例もあり,こちらはapoE-ε4との関連性は低かった.高齢者の精神障害の中でもうつ状態は器質的な疾患を背景に持つ特異かつ重要な臨床症状と考えられる.
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[Publications] 井出雅弘: "心身症の漢方治療" 今月の治療. 5. 69-76 (1997)
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[Publications] Endoh M: "Significatly increased frequency of the apolipoprotein E ε4 allele in elderly non-demented leprosy patients." Neurosci Lett. 207. 206-208 (1996)
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[Publications] 村松慎一: "群馬県山間地域における健常高齢者のアポリポ蛋白E遺伝子頻度およびアポリポ蛋白E受容体結合蛋白の検討." 日老医誌. 34(印刷中). (1997)
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[Publications] 井出雅弘: "自律神経失調症" PHP研究所, 190 (1996)