1995 Fiscal Year Annual Research Report
エストロゲン合成酵素の発現異常を誘起する多重エクソン1のスイッチング機構の解析
Project/Area Number |
07671163
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
原田 信広 藤田保健衛生大学, 総合医科学研究所・分子遺伝学, 助教授 (00189705)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 和代 藤田保健衛生大学, 総合医科学研究所・分子遺伝学, 講師 (90080217)
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Keywords | エストロゲン / チトクロームP450 / 選択的スプライシング / 多重エクソン1 / ホルモン依存性癌 |
Research Abstract |
先ず、49例の乳癌患者より手術摘出した組織を用いてアロマターゼの発現レベルと多重エクソン1の選択性の解析を行った。癌組織遠位部位では正常なエクソン1(exon 1b)の選択下、正常レベルのアロマターゼmRNAの発現が観察されていた。しかし、癌近位、特に癌周辺部の間質組織においては、高い頻度(53%)で選択される多重エクソン1がExon 1bからExon 1cへのスイッチングが起きており、それと同時に発現レベルの亢進が起きていた。また調べられた乳癌のうち23例の硬癌においては、リンパ節転移のない症例(12例)では他の癌と同様に約50%程度のスイッチングが生じていたが、リンパ節転移の認められる症例においては全例(11例)でExon 1cへのスイッチングが観察された。これらの解析から、乳癌の癌化・進展に深く関わっていると思われる乳房脂肪組織のアロマターゼの発現亢進ではかなりの頻度で多重エクソン1のスイッチングが起こっていること、またある種の癌ではこうしたスイッチングは癌細胞転移(悪性度)と深い相関があることが明らかになった。しかし、乳癌のなかには癌組織でのアロマターゼの発現亢進が認められない例や選択される多重エクソン1がExon 1bであるにも拘わらず発現亢進している例などもあり、さらに検討していくことが必要である。アロマターゼの発現亢進は他の癌(胃癌、肝癌、大腸癌等)でも観察しており、これらの癌化に伴うアロマターゼの亢進とエクソン1スイッチングとの関連も明らかにするために、今後さらに多くの症例、多種の癌組織について検討を行う予定である。また逆に、アロマターゼの発現低下が考えられる骨粗鬆症・動脈硬化症などについても、こうしたエクソン1のスイッチングによる発現低下の可能性を検討していく。
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