1995 Fiscal Year Annual Research Report
インスリン非依存性糖尿病におけるMAPキナーゼ経路の意義に関する研究
Project/Area Number |
07671168
|
Research Institution | Research Institute for Production Development |
Principal Investigator |
吉政 康直 財団法人生産開発科学研究所, 主任研究員 (00252437)
|
Keywords | インスリン / シグナル伝達 / 3T3-L1脂肪細胞 / MAPキナーゼ・キナーゼ / MAPキナーゼ / PI3キナーゼ / ワルトマニン |
Research Abstract |
1.インスリンシグナル伝達において、Ras-Raf-キナーゼ-MAPキナーゼ・キナーゼ(MAPKK)-MAPキナーゼ(MAPK)経路とPI3キナーゼ(PI3K)経路が重要である。従来、両経路は、独立したものと考えられていたが、近年、RasとPI3Kが相互作用を有することが示唆され、その可能性をインスリン感受性細胞である3T3-L1脂肪細胞(L1)において、PI3K特異的阻害剤であるwortmanninを用いて検討した。インスリンによるMAPKの活性化をwortmanninはRasとRaf-1の相互作用間で阻害した。この現象は、EGFによるMAPKの活性化には認められず、インスリン作用の特異性の分子的機序のひとつであることが示唆される。 2.インスリンシグナル伝達におけるMAPK経路の役割を検討するために、wild type(WT)、constitutively activeおよびkinase negative(KN)のMAPKKを3T3L1線維芽細胞にretrovirus vectorを使い発現させ、MAPKを恒常的に活性化或るいは抑制し、かつ脂肪細胞に分化する細胞株の樹立を行った。Xenopus MAPKK cDNAを用いて、N端アミノ酸を欠失させ(32-51)セリン(218,222)をグルタミン酸に置換したもの(ΔSE^2)、及びリジン(97)をセリンに置換したもの(KN)を作製した。COS細胞に発現させた場合、ΔSE^2はMAPKを恒常的に活性化し、その活性はWTに比べ38倍であった。各々のMAPKK cDNAを組み込んだ高力価のvirus solutionをinfectすることで、脂肪細胞に高率に分化する細胞株を樹立した。インスリン感受性細胞でのインスリンシグナル伝達におけるMAPKの役割はまだ解明されていないため、これらの細胞株はMAPKの糖輸送、グリコーゲン合成、及び遺伝子発現の役割を検討するために有用であると考えられる。
|