1995 Fiscal Year Annual Research Report
腎髄質部細いヘンレの上行脚の抗利尿ホルモン作用の解析
Project/Area Number |
07671230
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
根東 義明 東北大学, 医学部・付属病院, 講師 (00221250)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 幾磨 東北大学, 医学部・付属病院, 医員
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Keywords | 抗利尿ホルモン / 尿濃縮機構 / イオンチャンネル |
Research Abstract |
ハムスターをpentobarbital麻酔下に左腎を摘出し、実体顕微鏡下にヘンレの細い上行脚(ATL)を髄質内層より単離した。ATLを微小ピペットにて倒立顕微鏡上に設置された潅流層に移した後、ナリシゲ製微小潅流用マニピュレータにて管腔内をリンゲル液にて潅流し、ATL内外のリンゲル液を別々に交換し、それぞれの側からの溶液組成の変化に対する経上皮NaCl拡散電位(Vd)と^<36>Clの拡散係数(P_<Cl>)の反応を検討した。 抗利尿ホルモン(AVP)10-9Mを血液側リンゲル液に添加したところ、約2分でVdは約1mM増加し、P_<Cl>は30パーセント前後の増加が見られた。このことは、AVPがATLにおいてClイオンの透過性を促進することをしめしている。さらにこのAVPのVdにたいする作用は、V1受容体拮抗薬では消失しなかったにもかかわらず、V2受容体拮抗薬により完全に消失した。また、cAMPの類似化合物のdb-cAMPはAVPと同様にVdやP_<Cl>を増加させ、それらの作用はProtein Kinase Aの阻害剤により強く抑制された。 以上の結果より、ATLでは、AVPが血液側細胞膜上にあるV2受容体を介してadenylate cyclaseを活性化させることにより細胞内cAMP濃度を上昇させ、さらに産生されたcAMPが細胞内のProtein Kinase Aを促進し、この結果として細胞膜上のクロライドチャンネルが開くことにより、経上皮レベルでのクロライドの透過性が亢進すると考えられた。 このことは、ATLでのクロライド透過性の上昇が尿濃縮上、促進的に働くと考えられることを前提にするならば、AVPはATLにおいても、尿濃縮能の促進のために積極的な作用を持つことを強く示唆していると思われた。
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