1995 Fiscal Year Annual Research Report
個々の多形核白血球の機能を画像解析できる装置を用いた術後感染症の細胞生物学的考察
Project/Area Number |
07671370
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大倉 史典 東京大学, 医学部・附属病院(分), 助手 (50270872)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大原 毅 東京大学, 医学部・附属病院(分), 教授 (20010217)
鈴木 和男 国立予防衛生研究所, 生物活性物質部, 室長 (20192130)
山本 健二 東京大学, 医学部・附属病院(分), 講師 (80192798)
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Keywords | 好中球 / ミエロパーオキシダーゼ / 手術侵襲 |
Research Abstract |
我々は昨年度、日和見感染または縫合不全などを含む術後感染症に対する発生のメカニズムを解析するため、患者の多形核白血球(以下PMNと略す)に注目して術前・術後の追跡調査を行ってきた。PMNは、細菌感染の第一線の防御機構を担っているが、この殺菌機能は、PMNが細菌などの異物に向かって遊走し、これに接着し貧食してphagosomeを形成し、脱顆粒してMyeloperoxidasa(以下MPOと略す)を放出し、過酸化水素とMPOが共同的に殺菌機能を果たした時にその機能を発揮する。そこで我々はまず、様々な年齢や疾病の患者について、術前・術後の個々のPMNからのMPO放出量および放出率について測定を行った。 この結果、1、術前のMPO放出率は、対照群においても、患者においても年齢にしたがって低くなる。2、術後1日目のMPO放出率が術前に比べて明らかに増加した者では、感染症や縫合不全などにより、入院日数が長期にわたることがある。3、特に術後1日目のMPO放出率が術前に比べて下がるようなものは、非常に良好な術後経過をたどりやすく、その減少度は、PMNの数に反比例し、このような患者では、手術侵襲度が、PMNのホメオスタシスに影響を及ぼさなかったのではないかと考えられる。 これらの結果より、PMNは、患者の感染に対する免疫力を高めるだけでなく、生体の細胞障害性を強めることで、かえって術後の合併症の誘因となる可能性が高いことが示唆された。従って、術前、術後にPMNをコントロールすることにより、術後合併症を未然に防ぐ有効な手段が想定されると考えている。
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